2008/10/16
『理想の形』へ日々修業
甘いものが好きだ。流行のスイーツから和菓子まで。食べるばかりではなく、実際に作ってみようと、伝統的な和菓子だけでなく、アイデア和菓子も創作する豊田市足助町の御菓子司「風外虎餅」に弟子入りした。
指導してくれたのは、専務の長橋透さん(47)。大阪で修業を重ね、実家に戻った。十五年ほど前からは工場長としても菓子作りの責任を負っている。
エプロンと帽子を身に着け、甘い香りのする工場へ。手を洗い、アルコール消毒をして、準備は万端。「食の安心、安全が叫ばれているし、衛生面には細心の注意を払っている」という。
茶席にも出される和菓子「玉菊」に挑戦した。長橋さんは「少しレベル高いけど、頑張って」とひと言。
白あんと食紅で色をつけたピンクの練りきりを混ぜたあんで、ピンポン球大のこしあんを包み丸くする。長橋さんのまねをするが、こしあんが飛び出し、まだら色に。修業時代には丸めるこつをつかむために「手のひらでピンポン球を転がし続けた」という。
不器用さを見かねた長橋さんから次なる指示。ふきんで包んだあんを絞り、中心に花弁が入るように形作る。右手の親指と人さし指、中指でふきんを絞っていくが、うまくいかない。不格好な菊が何個も並んでいく。「同じ形のものを何個も作る気持ちで」と助言を受けた。
花弁と、葉の形をしたようかんを載せて、なんとか完成。菓子を見比べため息をついていると、長橋さんが言った。「僕も図工は苦手で不器用。和菓子教室で教えても、自分よりも素質がある人はいる。だけど、死ぬまで勉強。表現したいと思っていたものができるとうれしい」。職人の心意気を感じた。(杉山直之)
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メモ 風外は1963年に長橋さんの父、幸三さんが創業。現在は兄、朗さん(55)が2代目社長。専門学校などを卒業して職人を目指すケースが多い。修業時代の月給は10万円程度。資格は必要ないが、腕前を上げるには日々、経験を積み重ねることが必要。
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