中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【元気のタネ】「売った後」こそ商機 岐阜・養老の「西脇電器」

2010/12/28

 安さと品ぞろえを武器にした大型量販店に押され、商店街などの小さな電器店の経営環境は厳しさを増すばかり。そんな中、岐阜県養老町で2店舗を構える「西脇電器」は、地域の固定客を着実に増やし、この5年で売り上げを2倍に伸ばした。きめ細かいアフターサービスが顧客の心をつかんでいる。

 12月中旬の土曜日。小雨がぱらつく中、西脇電器本店に中高年や子ども連れが次々と訪れた。毎月恒例の感謝セール。「お孫さん、元気?」「テレビの映り具合はどうですか」-。店員が笑顔で話しかけ、コーヒーやお菓子でもてなす。顔なじみのお客同士がテーブルを囲み、おしゃべりに花を咲かせた。

 顧客との顔の見える関係が強みだ。会社のモットーが、本店外壁に大きく掲げてある。「電化製品は買った後が大事なんです」

 1954年にラジオ店として創業。83年に2代目の西脇武美社長(52)が後を継ぎ、約210平方メートルの現店舗に移転した。移転後20年の売り上げは、増えたり減ったり。

 転機は6年ほど前、後継者問題がきっかけだった。「子どもがやる気になってくれる店にしなければ」。行き着いたのがアフターサービスの充実だった。数年前に始めていた学習塾やパソコン教室からは手を引いた。

 エアコンの掃除・点検や電球・電池の取り換えなどを順次無料にした。家電品を買った人には、3週間後に電話を入れ、製品の調子を確かめ、使い方をアドバイス。月に1度、顧客宅を回り、不具合や困り事がないかを尋ねる「調子伺い」も徹底した。さらに一時は5社以上扱っていた製品を、1社に絞った。店員が製品に精通することで、サービス向上につなげる狙いだ。

 昨年、5キロほど離れた支店を出店。今年の売上高は2005年の2倍、2億円に達した。「コツコツやってきたことが形になってきた」と西脇社長。

 エコポイント制度が終わっても不安はない。売った後が腕の見せどころだからだ。養老町は約8000世帯。「もう1店出してシェアを50%の4000世帯にしたい」。“まちのでんきやさん”は意気込む。

 (重村敦)

店員に勧められ、テーブルを囲んでくつろぐ来店者たち=岐阜県養老町の西脇電器本店で
店員に勧められ、テーブルを囲んでくつろぐ来店者たち=岐阜県養老町の西脇電器本店で