2008/10/15
中部地区から沖縄県に進出する企業が増えている。全国平均よりも安い人件費や労働力を確保しやすい採用環境などが、企業の進出意欲を刺激している。沖縄県は今年4月、東京と大阪に続き、名古屋市にある出先機関にも企業誘致の担当者を配置。モノづくりの集積地である中部の特性に目を付け、製造業誘致へのてこ入れを図っている。
沖縄県うるま市の工業団地の一角に設けられたキャンピングカー製造「トイファクトリー」(岐阜県可児市)の沖縄工場。10月でも時折、気温30度を超える。熱気を吹き飛ばすような扇風機を背に10日、20代の若手技術者らが車内の家具を仕上げていた。
沖縄県名古屋情報センターによると、2007年からの2年間で沖縄進出を決めた中部の企業は、コールセンター業務を移したメニコン(名古屋市)など6社。進出数は、東京には及ばないが「関西をしのぐ水準」に達している。インターネットの普及で距離のハンディを克服した情報通信分野が中心だ。
企業側に最も魅力的なのは人件費の安さ。07年の平均初任給は、高卒男子が13万1000円、女子が13万円で、全国平均を約2万円下回る。オフィスの賃貸料も安く、全体のコストは「中部と比較すると2割ほど抑えられる」(同センター)とアピールする。
人材も確保しやすい。07年、30歳未満の若年労働者の失業率は12・7%で、全国平均の約2倍。「買い手市場」といえる。
自動車情報誌「Goo(グー)」の発行などを手掛けるプロトコーポレーション(名古屋市)は昨年4月、制作子会社プロトデータセンターを沖縄に設立。国産や輸入車などテーマごとに分けたシリーズ23媒体の情報入力やデザインなどを“沖縄発”のグループ企業で始めた。
従来は北海道の製版会社に外部発注していたが、沖縄進出により「年間約7億円のコストダウンが図れた」(同社・大河内敬三取締役)という。
一方、製造業には直線距離で約1300キロ(名古屋-那覇)に及ぶ製品輸送コストが重くのしかかる。2000-07年度の企業立地は、情報通信関連産業が144社に上る半面、製造業は25社にすぎない。雇用創出効果の高い製造業の進出に地元の期待は高いが、輸送の問題がネックになっている。
もっとも、トイファクトリーの場合、トヨタ自動車の関連会社の協力と沖縄県の助成金で大幅に圧縮。1台当たり24万円だった往復輸送代を5万-8万円に抑えるのに成功した。
今後は4年以内に、愛知県内の自動車部品メーカーなど2社の進出が決まっている。同センターの企業誘致担当者は「沖縄には優秀な技術者がいても働き口がない。中部を突破口にして製造業を誘致したい」と話している。
(小野谷公宏)
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