2010/12/23
精密工作機械メーカー、ナガセインテグレックス(岐阜県関市)が、金型成型分野への売り込みを強化している。世界屈指の1ナノ(100万分の1ミリ)単位の超精密加工で金型を製造することで、メンテナンス回数が減りコストを低減できるという。金型成型は多くの製造業で用いる基幹技術。円高や新興国の躍進で競争力低下に苦しむ中小メーカーでの導入を見込む。
今年初め、愛知県内の自動車部品メーカーが、ナガセが加工した金型をプレス成型に用いたところ、金型の寿命が約20倍に伸びた。金型の加工精度(直角・平面・平行度)を従来の10倍程度に高めることで、プレス成型時に起きる金型のたわみや変形、摩耗が小さく抑えられたためだ。
超精密加工により、通常は大型化するほど加工時の誤差が生じる金型を、精度を保ったまま大型化できるのもナガセの“売り”だ。
長瀬幸泰社長は「金型の高精度化・大型化は、単に高品質で大きな部品を作れるというだけでない。1度に多くの製品をばらつきなく繰り返し生産できることに結び付く。それによって企業の競争力が強化される」と強調する。
工作機械は完全受注生産で、各企業の仕様ごとに1機ずつ生産するため、他メーカーと比べ、製造に時間がかかり、価格面も割高になりがち。だが、導入後の運転費用まで考えれば、多くの場合、全体のコストは安くなる計算だ。
製造業者に対して、金型の高精度化によるコスト低減の提案に力を入れるようになったのは、2008年のリーマン・ショック後から。それ以前も超精密工作機械の導入を勧めていたが、「景気が良かった時はあまり聞き入れてもらえなかった」(長瀬社長)。最近は特に、ハイテク化や素材転換、低コスト化が進む自動車関連業界の関心が高くなっているという。
売上高の98%は国内向け。長瀬社長は「生産拠点の海外移転が進んでいるが、技術を高めれば、まだ国内で勝負できることを証明したい」と意気込む。中小企業の力を引き出し、産業空洞化を防ぐヒントになりそうだ。(細井卓也)
ナガセインテグレックス 1950年創業。80年から超精密加工機の製造に取り組み、摩擦がゼロに近く、加圧しても体積の変動がない油の特性を応用した「多面拘束非接触油静圧案内方式」と呼ばれる独自の機械制御法を開発。2002年に1ナノ(100万分の1ミリ)の精度で制御できる工作機械を実用化した。特に自動車や半導体などハイテク分野で注目を集め、04年にはハワイのすばる望遠鏡の高精度レンズの研削加工を請け負った。資本金5000万円、社員は約120人。
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