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【暮らし】年の瀬 懸命に職探し 若者向け支援施設 ルポ

2010/12/24

 不況による厳しい雇用情勢が続いたこの一年。特に若者の失業率は高い状況が続いている。内定が得られない就活生、リストラされた元社員…。愛知県と愛知労働局が運営し、四十歳未満の就職を総合的に支援する「ヤング・ジョブ・あいち」(名古屋市)は、そんな彼らが足を運ぶ。年の瀬の一日、利用者たちの声を現地で拾った。 (片山健生)

 午前9時30分 開所早々に手続きをしたのは、来春卒業予定の愛知県稲沢市の女子短大生(20)。相談員の助言を得るために訪れた。就活で約五十社受けたが連敗中。「自分に合った仕事を見つけることが大事。早さじゃない」。自らに言い聞かせるように話した。

 9時50分 別室にリクルートスーツ姿の男女が集まっていた。新卒生と既卒生を対象にした同所主催の合同面接会。参加企業は中小六社とわずかだが「有力な会社に絞り込んでおり、ゆっくり面談できる。大手志向の強い学生に中小企業の良さを知ってほしい」と担当職員(57)は期待を寄せた。

 10時8分 各ブースで企業と学生の面談が始まった。予備校を経営する会社の男性社員(31)は「採用で重視するのは人間性。就職がなかなか決まらないのは逆に多くの企業を知るチャンス、ぐらいの前向きさがほしい」。

 11時40分 パソコンで求人情報が検索できる席が埋まってきた。利用していた名古屋市の男性(29)は十月末で会計事務所を辞めた。無給の休日出勤を毎週のように強制され、体を壊したためだ。簿記資格が生かせる仕事を探して連日、通っている。「これまで十五社応募して、まだ採用されない」とため息をつく。

 午後1時38分 「お願いしまーす」。別室で男女九人が声をそろえ、講師に頭を下げた。就職支援事業「ジョブクラブ」の十三期生だ。自己分析や面接技能などを極める十一日間のプログラムの二日目。豊田市の男性(30)は「今はガソリンスタンドでアルバイトをしています。正社員になり、将来は家庭を持ちたい」と真剣だ。

 2時46分 「会社が経営不振でこの秋に名古屋のスタジオを廃止したんです」。就職支援事業のチラシを見ていた名古屋市の女性(27)がこぼす。ゲーム開発会社でデザイナーとして働いていた。技能を生かせる再就職先は「名古屋ではなかなか見つからない」。

 4時19分 求人検索を終えた名古屋市の男性(30)が足早に戸外へ。これからアルバイトに向かうという。今年六月、二年間勤めた造園会社をリストラされた。同い年の妻がいる。「造園会社を希望していますが経験が浅く、採ってもらえない。あと二、三カ月で蓄えもなくなる」

 5時3分 「手応えはありませんでした」。就職面接を受けた帰りに立ち寄った名古屋市の男性(22)は苦笑いを浮かべた。勤務するガラスメーカーの工場を十月末に辞めた。規模縮小に伴う退職勧奨に、妻子ある先輩社員に代わって応じた。「もう十社ほど受けましたが、再就職は想像以上に厳しい。クリスマスムードに浮かれている場合じゃないです」

 6時15分 閉所時間を過ぎて、最後に出た求職者は、正社員を目指す豊山町のアルバイト女性(23)。相談員に履歴書を添削してもらうため、八時間の仕事が終わった夕方から訪れていたという。外はすっかり日が暮れていた。「今日は仕事で疲れたし眠いです」。うつろな表情で、帰宅のバスに乗り込んだ。

 <ヤング・ジョブ・あいち> 40歳未満の学生や求職者を対象にした就職総合支援施設。愛知県と愛知労働局が連携して運営。適職探しの支援、就職活動の指導、求人情報の提供などをしている。若者の就業を支援する組織は各地にあり、東京都では、東京しごとセンター(千代田区)内に34歳以下対象のヤングコーナーが設置されている。

あわただしい年の瀬の街を横目に、職を求めて足を運ぶ若者たち
あわただしい年の瀬の街を横目に、職を求めて足を運ぶ若者たち