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【元気のタネ】糸の技術で夢心地 大府の「ウィーヴァジャパン」

2010/12/22

 釣り糸を作る機械の製造から一転、社名変更し4年前にマットレス製造を始めた「ウィーヴァジャパン」(愛知県大府市)が売り上げを伸ばしている。ポリエチレン樹脂の極細糸を絡み合わせた立体構造で、適度な反発力と通気性を実現したマットレス「エアウィーヴ」が人気。持ち味を生かした新分野への挑戦が実を結びつつある。

 同県幸田町にある同社工場。釣り糸を製造するプラスチック射出成形機を改造した装置から、マットレスの素材となる直径1ミリ弱の液状の樹脂糸が数百本、水槽の中に吐き出されていく。糸が着地するコンベヤーの速度によって糸が絡まる密度が変わり、出来上がるマットレスの堅さや厚さに違いが出る。

 エアウィーヴの厚さは5センチ。シングルタイプの場合、25メートルの糸が約500本絡まっている。糸の間に空間があるため、冬は空気で断熱されて暖かく、夏は蒸れにくい。絡んだ糸が体を支えて体圧も分散され、反発力で寝返りも楽に打てるのが特徴だ。

 「今春からようやく黒字転換したが、それまでは大赤字だった」と高岡本州(もとくに)社長(50)は振り返る。配電機器類メーカーを経営するかたわら、業績が低迷していたウィーヴァジャパン(当時は中部化学機械製作所)を伯父から引き継いだのは6年前。当時は釣り糸製造機のほか、クッションや園芸品の素材も製造していたが、納入先が提示する価格では利益を出せなかった。

 思い切って他の製品から撤退し、消費者に直接使ってもらえるマットレスに絞って製品開発を始めたのは2006年6月。健康ブームで人気のウレタン素材の低反発マットレスがヒントだった。品質を認めてもらうために目標としたのが「体調管理に妥協しないスポーツ選手に認められる寝心地」(高岡社長)だった。

 糸の太さや絡ませ具合を変えて試作を繰り返し、知人のスポーツ選手やファッションモデルに試してもらいながら適度な堅さを探った。07年6月に発売したエアウィーヴを、五輪候補選手らのトレーニング施設として知られる国立スポーツ科学センター(東京)の宿泊施設に無償で提供。08年の北京五輪では北島康介選手ら水泳・陸上競技の選手団、今年はサッカーワールドカップの日本チームに試してもらった。

 この販促戦略が奏功し、トップアスリートの愛用品としてメディアや口コミを通じて認知度が上昇。和室用に厚さを6・5センチに増して敷布団とマットレスを一体化したタイプも11月に発売し、11年3月期の売上高見込みは5億円と、前期の5倍に迫る勢いだ。

 高岡社長は「素材として取引先に提供するのとは違い、(完成品は)消費者の評価を聞いて開発に還元できる」と意気込む。柔らかい布団に慣れた人から「堅い」との声があったため、来年には堅さを抑えたタイプも投入する計画だ。

(大森準)

釣り糸状の樹脂を素材にしたマットレス「エアウィーヴ」を開発した高岡本州社長=愛知県幸田町のウィーヴァジャパン幸田工場で
釣り糸状の樹脂を素材にしたマットレス「エアウィーヴ」を開発した高岡本州社長=愛知県幸田町のウィーヴァジャパン幸田工場で