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【元気のタネ】「一歩先」を提案 岐阜・関のキッチン用品開発「川嶋工業」

2010/12/18

 消費不況が続く中、独自のキッチン用品開発にこだわって市場を切り開いてきたのが川嶋工業(岐阜県関市)。ステンレス素材のロングセラー商品のほか、最近はチョコレートを流して冷やし固める型などシリコン素材の商品が人気だ。今年はポテトチップスをつまんで食べるプラスチック素材の道具「ポテトング」が大ヒット、3月の発売以来20万個を売り上げている。

 関を代表する地場産業、刃物の輸出問屋として1948年に創業。66年からオリジナルのキッチン用品を作り始めた。当時、「関の刃物」は全盛期だったが、ほとんどはバイヤーからの受注生産。「画期的と言われた。その時の精神が受け継がれている」と社長の川嶋紹市さん(53)は胸を張る。

 創業者の長男の川嶋さんが社長に就いたのは99年。不景気で取引先の問屋の廃業や倒産が続出する中、川嶋さんが目を付けたのがシリコンだった。

 冷熱に強くて柔らかく、色が鮮やかで自由に形を作ることができる素材。「これから会社勤めで忙しい女性が増える。シリコン素材のキッチン用品なら電子レンジを使って料理時間が短縮できる。それに、不況の時はカラフルな商品が売れる」

 こう思い付き、第一弾として鍋つかみや鍋敷きなどで使える「シリコーングリップ」を開発したところ大ヒット。シリコンのキッチン用品を作ったのは国内メーカーで初めてだったといい、当初は「高温で溶けないのか」など問い合わせが殺到、説明に追われた。

 今やシリコン製キッチン用品の人気は定着、同社の取り扱う商品は約100種類に上る。ハートや動物の形をしたチョコレート型は、製菓用品売り場で大人気だ。

 そして今年、注目を浴びたのが「ポテトング」。東急ハンズ名古屋店の調理器具担当者が昨秋、「ポテトチップスを食べる際、指が汚れないよう、はしを使う人がいる。もっとつまみやすい品が作れないか」と提案したのを受け、開発した。

 先端に刻み目があってしっかりつまめ、強くつまんでも全体がたわんで力を分散させてポテトチップスが割れないようにするなど、工夫を凝らした。人気はうなぎ上りで、今月、従来の6色に新たな6色を追加。持ち運び用のケースも作った。

 年に100件ほど手がける新商品開発のうち半数は失敗というが、多彩なロングセラー商品の存在が挑戦を支える。川嶋さんは「少し先の生活シーンを提案し、お客さまに感動してもらいたい。自分たちで時代の流れを創造したい」と意気盛んだ。

 (今村節)

ポテトングを手に「お客さまに感動してもらいたい」と語る川嶋工業社長の川嶋紹市さん=岐阜県関市で
ポテトングを手に「お客さまに感動してもらいたい」と語る川嶋工業社長の川嶋紹市さん=岐阜県関市で