2010/11/12
不況による就職難が続く中、NPOを就職先として選ぶ若者が増えている。事業拡大に伴って雇用環境が整ってきたことや若者の仕事を選ぶ基準の変化が背景にあるとみられるが、就労環境では厳しい面もあり、理念への共感が大切だ。 (境田未緒)
「就職が決まった友人を見て、焦りがないといえばうそになりますが、私は非政府組織(NGO)で働きたいんです」。愛知県の名古屋学院大四年、二角智美さん(22)は熱い思いを語る。
ボランティアをしていた母親の影響で国際協力に関心を持ち、大学でも専攻。フィリピンへの留学などを通して「みんなが平和で幸せに暮らせる世界に」とNGO就職を真剣に考えるようになった。
現在は、名古屋市のNPO法人名古屋NGOセンターが開講する研修でインターンなどに臨む。両親には「生活できるのか」と反対されているが「自分に納得できる働き方をしたい」と話す。
NPOのスタッフ育成や就職フェアなどに取り組む京都市のNPO法人ユースビジョンの赤沢清孝代表は「行政からの委託や公共施設の指定管理など継続事業を引き受けるに当たり、スタッフが必要になった」とNPOによる雇用が増えた事情を説明する。事業拡大で給料や社会保険などの雇用環境も整ってきた。
就職先を選ぶ基準に「社会貢献」を挙げる学生が増えるなど、若者の価値観の変化も。「一般企業に比べ委ねられる責任や権限が大きく、自発的に仕事をしたい人にはやりがいが大きい職場」(赤沢代表)との認識も広がっている。
同県大府市の田口裕晃さん(26)は週四日と週二日、二つのNPOを掛け持ちして働く。学生時代からNPOに関心があり、求人広告の会社で二年間働いて昨年、転職した。
労働時間は会社員時代と変わらないが、収入は二つのNPOを合わせても三分の二に。だが「単純な事務作業でも、誰かの笑顔につながると思うとやる気になる。社会を良くしたいという思いを持ち続けることが大切」と語る。
赤沢代表は「事業収入の増減などNPOの労働環境は変動が大きく、変わらないのは団体の理念。自分の理念と合うかどうかの見極めが大切」とNPO就職を考える若者にアドバイスを送っている。
人材を育てる余裕があまりないため、NPOは企業などで社会経験のある人を採用する場合が多い。だがユースビジョンが昨年、二十~四十代の職員を雇う全国百団体とその職員二百七人から回答を得た調査では、学生からNPOに就職した人も23%に上った。
諸手当などを含まない月額基本給は「十五万~二十万円未満」41%、「十万~十五万円未満」23%、「二十万~二十五万円未満」19%。厚生労働省の二〇〇九年賃金構造基本統計調査によると、大卒の初任給は十九万八千八百円となっている。
また八~九割の団体が雇用保険や健康保険、厚生年金保険、労災保険に加入。夏季休暇も整備する団体が多いが、「産前産後休暇・育児休暇、子の看護休暇」を備えるのは39%、介護休暇は26%の団体にとどまった。
職員採用の決め手(複数回答)では、七割の団体が「団体の理念への賛同・共感」を挙げ、「職務に必要な経験、能力がある」「他組織や人と協働していく力がある」が続く。
大学を卒業してすぐ国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」(東京)に就職した三本裕子さん(26)は「ビジネスの感覚が必要だと思うときもあったが、すごく成長させてもらった」と振り返り、「働き方は変わってきている。まずはボランティアやインターンで飛び込んでみてほしい」と話している。
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