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【岐阜】卓越した職人技 「現代の名工」に3人

2010/11/10

 卓越した技能者を表彰する「現代の名工」に、県内からは3人が選ばれ、厚生労働省が9日発表した。3人の横顔を紹介する。

◆服部一郎さん(71)=刃物製造工(関市)
 表面に無数の波打つような模様を入れた「ダマスカス鋼」の包丁や、刃先から峰までなだらかなカーブを描く「はまぐり刃」のナイフ。優美で実用性に優れたヒット作を次々生み出し、料理人や海外にファンが多い。

 1983年、ニッケルとステンレスを組み合わせたダマスカス鋼の製造技術を編み出し、5年後に実用新案登録を受けた。中東や西欧で伝わっていた鉄を中心素材としたものとは違い、さびにくく高い強度を実現した。

 刃物業界の後継者育成の場として2008年に関市本町にできた「関の刃物工房」では工房長を務め、技術伝承に務める。「関以外では絶対に作れないものを作りつないでほしい」。服部刃物社長。 (中尾吟)


◆三浦俊勝さん(77)=宮大工(郡上市)
 土地柄も手伝って社寺の新築や修復を数多く手掛け、軒先の優美な曲面「軒反(のきぞり)」や、柱上部の豪壮な「升組み」などに力を発揮してきた。

 中学校卒業後、しばらく家の農業を手伝ったが、戦争で日本が焼け野原になったことにピンときた。「建築の時代だ」と大工の修業に。勘は当たり、仕事は繁盛。入り母屋造りの伝統家屋を中心に、一般住宅も多い年で50軒以上建てた。

 日本建築大工技能士連合会副会長など業界の要職も務め、自ら育てた職人は30人近く。木材の選別から立ち会い、常に「木の目をよく見ろ」と言う。「もうかる時代じゃないが、今は若い人に技術を継承することに一番の喜びを感じます」 (築山栄太郎)

◆島塚幹司さん(59)=瓦ふき工(岐阜市)
 瓦ふき工に携わっていた父親の影響で、物心ついた時には、現場で父の仕事ぶりを見学していた。

 職人の道を歩み始めたのは、高校卒業後。「技術は目で見て身につけてきた」。岐阜市内の職人の家に住み込みで働き、他の職人の仕事ぶりを見て研究を重ねた。それでも「苦痛に思ったことはなかった」といい、思い通りに配置できた瞬間、「現場が一つの作品のように感じる充実感」で満たされた。

 約30年前に「屋根島工務店」を立ち上げ、一般民家から岐阜城の修復まで幅広く手がけてきた。「寺や城はずっと残るもの。今後は技術の伝承にも力を入れ、文化財を残していけるような人材を育てていきたい」 (松山祥子)