2008/10/09
数十人 1人で抱える
エネルギーにあふれた子どもに囲まれ、何だか楽しそうだ-。そう考えて飛び込んだのが、保育士の職場。二歳の娘を持つ父親力を磨く機会とも思い、豊橋市くるみ保育園(松葉町)にお世話になった。
午前九時。「おはよう」との大声が増え始めた。園庭で遊ぶ様子を眺めていると想像より素早い。ちょっと目を離したすきに視界から外れ、徐々に手に汗を感じてきた。
この日は運動会の練習。玉入れの見本を披露すると、「すごい」と歓声。有頂天になっていると、近くの女の子が保育士の梅徳さとみさん(34)に「頭が痛い」。急いで室内に連れて行くのを見守ることしかできなかった。
練習後は担当する年長さんの部屋へ。すると、家守早紀ちゃんが手を引っ張って「一緒に遊ぼ」。言われるがまま、ブロックを組み立てると「遅いよ」と笑われた。さらに五、六人の園児が「ねぇ、何歳?」「ポニョを見たよ」「うちのママがね…」。次々と話しかけられ、どう対応したらいいか分からずひと言ずつ返答した。
大場純子園長(53)にその事を伝えると、「途中で話し掛けてきた子に待ってもらわないと。『割り込みはダメ』と教えるのが大事だから」。わが子のように、できる限り全員の気持ちを受け止めれば良いのでは、と思っていた。集団生活をする点で保育園は「社会」と同じ。園児と接する距離の取り方の難しさを知った。
午後三時半すぎ、園児が少しずつ帰宅していく。大場園長は母親らに手をひかれる姿を見ながら「寂しさと安堵(あんど)の気持ちが半々でしょうか」とつぶやいた。
限りない可能性を秘めた何十人の園児を一人で抱える保育士の重責に頭の下がる思いがした。(安田功)
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【メモ】大学や専門学校などの養成機関を卒業するなどし資格取得が必要。豊橋市は年間10人前後を採用。短大卒の初任給は16万3900円。基本的な勤務時間は午前8時30分-午後5時15分だが、早朝保育や休日保育などもある。
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