中日新聞CHUNICHI WEB

就職・転職ニュース

  • 無料会員登録
  • マイページ

【富山】就農 『新規参入』が急増 昨年度、4倍超の26人

2010/10/11

転職組 『担い手不足 むしろ好機』
不況や進む法人化 背景に

 農家出身ではない県内の新規就農者は二〇〇九年度が二十六人で、前年度の四倍以上に急増したことが、県の統計で分かった。県は、不況に加え、農家の法人化が進んだことなどから、農業が就職先の受け皿になったとみている。(宮本隆康)

 実家を継いだ人も合わせた新規就農者全体は、前年度から一・九倍増の五十一人。このうち、農家出身ではない新規参入は、約五割を占めた。

 これまでは、新規就農者全体はほぼ二、三十人台、新規参入者は数人程度で推移してきた。ともに過去二十年間で最多になった。

 新規参入者の年代別では、二十代が十四人で約五割。三十代の八人を加えると、大半を占める。残りは四十代が三人、五十代が一人だった。

 増加の理由について北陸農政局は「近年の農業への関心の高まりと、不況、国や県の雇用対策事業の効果」としている。県砺波農林振興センターの職員は「不況に就農者が増えるのは以前からの傾向」と説明する。

 新規参入者は、全員が会社や営農組合などの従業員。新規就農者全体でも、八割以上が法人の従業員として働く。

 このため、県の担当者は「個々の農家にとって、従業員の社会保障など事業主負担は重荷。雇用には一定規模が必要で、法人化が進んでいなかった以前なら、これほどの増加はなかったのでは」と指摘する。

   ■  ■

 米や花きなどを栽培している砺波市庄川町天正の有限会社「梅香園」では、新規参入の二人が働いている。滝谷祐希さん(26)=同市=は、物流会社の運転手から転職した。

 「食の大切さにかかわる仕事に、やりがいを感じたから。農業は担い手がいないといわれているなら、むしろチャンスかな、とも考えた」と語る。

 もう一人の川島英樹さん(39)=同=は、大学で農業を学んだが、卒業したときは運輸会社に就職した。当時は米の輸入自由化が決まり、農業は先行き不透明とみられていた。公務員や農協職員になる同級生はいても、就農する人はいなかったという。

 「地元を守るためには、地域に根差した農業が廃れるのを何とかしなければ」と、就農を思い立った。農協や花き流通業界に数年勤めた後、地元の梅香園で働き始めた。

 「農業を目指すと言ったときは『どうしたの』と笑われました。最近は『先見性があった』と言われます」。中国産食品の安全性の問題が起き、地産地消がもてはやされ、農業に追い風が吹いていると感じているという。

農作業に取り組む川島さん(左)と滝谷さん=砺波市庄川町天正で
農作業に取り組む川島さん(左)と滝谷さん=砺波市庄川町天正で