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やってみました 記者たちの職業体験ルポ アメリカンバー

2010/09/15

『本場の味』手際よく

 細かくたたいた牛肉をふんだんに使った肉とカリカリのパンで、本場のハンバーガーを提供する豊田市西町一のアメリカンバー「AMERICANO(アメリカーノ)」。高さ十五センチにもなるハンバーガーは、あふれ出す肉汁と食べ応えで、若者の旺盛な食欲を満たしてくれる。味の秘密を探ろうとオーナーの菊地大介さん(33)に弟子入り志願した。
 店の一番人気、ベーコンチーズバーガーづくりに挑戦。まずは、肉を固めた“主役”のパティに取り組んだ。「平らに」との指示で、両手に挟んで延ばすが、力加減が難しくすぐにいびつな形になってしまった。菊地さんの手にかかると、あっという間に表面が滑らかで、丸いパティが出来上がる。手が力加減を覚えているという。

 パティを焼き始めてからが忙しい。パンとベーコン、チーズを同時に鉄板に載せる。パンにバターやケチャップを塗り、パティが焼き上がった瞬間に挟む。出来上がったばかりを提供するため、時間の計算が必要だが、記者は動きについていけなかった。

 カウンターの客は、傾ける酒だけでなく、店員との会話も来店の目的だ。だから菊地さんは調理中でも、陽気に気の利いた合いの手を入れる。「焼き上がりまでの時間は体に刻まれているから」と菊地さん。客を退屈させず、会話が盛り上がったころに目の前にハンバーガーを差し出す絶妙さだ。

 菊地さんは静岡県出身。豊田市内の大学に進学し、バーでアルバイトをしていた。料理が好きだったこともあり、飲食業界に就職した。

 昨年店を開くまで、市内の五店舗を渡り歩いた。五年ほどはバーテンダーが専門。「やっぱり料理が好き」と、勤務の合間に独学で料理を学んだ。

 三年前にホットドッグとハンバーガーの店に入店。ハンバーガー作りの基礎を学んだ。一人でできるとの自信を得た昨年、念願だったアメリカ風の店のオープンにこぎつけた。店には一九五〇年代のロックやポップスが流れ、英語の看板が雰囲気をつくる。

 「この人、前に来てくれたはずだ」。扉をくぐる顔に懐かしさを感じる瞬間、自分の店を持ってよかったと実感するという。「お客さんに味だけでなく、楽しい時間を提供できる店にしたい」が目標だ。(渡辺陽太郎)

 【メモ】特別な資格はいらないが、店を開く際は食品衛生講習の受講が必須。自分の店を持つため、少なくとも5年間は他店で修業するのがベストという。アメリカーノは初任給18万円から、アルバイトは800円から。菊地さんが修業を始めた時、初任給は17万円ほどだった。

パティの焼き上がりを計算しながら作業をする菊地さん=豊田市西町1のアメリカンバー「AMERICANO」で
パティの焼き上がりを計算しながら作業をする菊地さん=豊田市西町1のアメリカンバー「AMERICANO」で