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【暮らし】就業体験!! 普通科の高校生がチャレンジ

2010/09/04

 職業高校で積極的に取り入れられている高校生のインターンシップ(就業体験)。愛知県内で今夏、普通科などの生徒も参加できる「マイチャレンジインターンシップ」が初めて開かれた。通常は学校単位で実施されるが、誰でも参加できるようにしたのが特徴だ。 (市川真)

 「このボタンを押すと、ドリルが回って危ないから押さないでね」

 愛知県刈谷市の自動車部品メーカー、アイシン精機のものづくり教室。同県半田市の半田東高校普通科一年、中須賀翔平さんら高校生三人が、社員とともにコイルモーターの製作を子どもたちに指導した。

 三人は、社員の分かりやすい教え方を観察しながら、見よう見まねで工夫。机に向かういつもの勉強とは全く異なる体験に、中須賀さんは「仕事は大変だというイメージがあったけど、続けていけば楽しさがあるかも」と話した。

 マイチャレンジインターンシップは、県の委託事業として、NPO法人アスクネットが企画・運営。研修先企業の開拓と高校を結び付ける同NPO法人のコーディネーター九人の育成を含め、三年計画で実施している。

 参加したのは、県内の高校生約五十人。七月末から八月にかけての三日間程度、民間企業やNPOなど、二十四カ所に分かれて職業や仕事を体験した。

 まちづくり系NPO主催のワークショップを手伝ったのは、名古屋市の名城大付属高校普通科三年、細井千詠さんだ。

 講師の紹介や参加者への資料配布、障害のある参加者の感想を代筆するなど、裏方仕事を丁寧にこなした。

 「進学先を何となく決めたくない。夏休みに何かをやっておきたかった」。大学進学を目指す細井さんは、今回の就業体験を進学先の選択に生かしたいと、参加を決めた。ワークショップの仕事は初めてのことばかり。「やらされるのではなく、自分から変えていく気持ちが大切だと思った」と刺激を受けていた。

     ◇

 普通科も対象となる今回の就業体験では、参加した高校生の約八割が、将来の職業を考えながらの進学を希望している。半面、進学者が多数を占める高校では、就業体験参加の意義が伝わりにくく、教員の理解を得るのに時間がかかる場面もあった。

 文部科学省も中高生の就業体験を含むキャリア教育を重視しているが、全国的に、進学する生徒の多い普通科高校の動きは鈍い。

 国立教育政策研究所生徒指導研究センター(東京)の二〇〇九年度調査では、職業体験を実施する普通科は六割あるものの、実際に参加する生徒の割合は16・7%にとどまる。一方、企業実習の歴史が長く、単位認定している学校も多い職業学科の実施率は九割前後と高い。

 同センターの担当者は「実施校や参加生徒は年々増えてはいるが、職業学科と普通科の温度差があるのは事実。就業体験は、仕事への具体的なイメージを持つことができ、勉強の動機づけにもなる」と意義を強調する。

 マイチャレンジインターンシップを企画したアスクネットの理事、毛受芳高さんも「将来どう生きていくのか、社会の中でどう活躍するのか、就業体験を通して考えることで、偏差値偏重の大学選びを変えられるのでは」と話している。