2010/08/20
二〇〇八年秋のリーマン・ショック以降、派遣社員などフルタイムの非正規で働いてきた女性で職を失った人は多い。年齢が上がるほど新たな仕事先を見つけるのは難しく、非正規雇用者の正社員就職を支援する動きも出ている。 (竹上順子)
「履歴書を見た面接官が『大企業で働いてるけど派遣なんだね』って。派遣は経験として見られていないとよく分かりました」。千葉県の独身女性(42)は求職中を振り返る。
新卒時に正社員で入ったアパレル会社を辞めてから十四年間、派遣社員として事務などをしてきた。短いと一カ月、長くて三年。昨年夏、大手メーカーとの契約が更新されず、失職した。
「じっくり求職活動できる最後のチャンス」と正社員を目指すことにしたが、書類選考さえ通らない日々。短期の仕事も入れつつ派遣会社やハローワークなどに通い、職業選択の相談や支援をするキャリアカウンセリングを受け、履歴書の書き方、面接のアドバイスも受けた。
「キャリアは仕事だけじゃない」というカウンセラーの言葉に“婚活セミナー”にも行った。失職から十カ月たった時、「もう無理かな」と正社員以外にも応募を始め、ようやく面接にこぎ着けられるようになった。
それから一カ月ほどで現在の製造会社の契約社員の仕事が決まった。だが月給は十七万円ほどで、事前に聞いた仕事内容とも違う。有期雇用では二人暮らしの母親(71)との将来も心配なため、また正社員の仕事を探すつもりだ。
労働政策研究・研修機構の調査では、非正規から正規への移行者の比率は、最も移行しやすい二十~三十代前半の男性の10~20%に対し、三十代の女性は2~3%にとどまる。
働く女性の約半数は非正規で、近年は契約社員などフルタイム化が目立つ。晩婚・未婚化も進んで自ら生計を担う女性は増えているが、正社員との賃金の差は年齢が上がるほど開いていく。
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「派遣で途切れず仕事が続いた人ほど、三十代後半や四十代で『スキルも資格もない』と途方にくれる場合が多い」と話すのは、キャリアコンサルタントで、企業のメンタルヘルス対策を請け負う「ビセオ」(東京都品川区)の吉田郁子代表。「賃金格差などは政治的解決が必要だが、自分なりの努力も必要」と指摘する。
職務経験を客観的に見て自分のPRポイントを見つけたり、現実的な見通しを立てたりするためにも、吉田代表はキャリアカウンセリングを受けることを勧める。事務職希望の人が営業に向いているなど、本人も気づかない適性を見いだし、求職先の幅を広げることもある。ハローワークなど公的機関では無料で受けられる。
都民の就職支援をする「東京しごと財団」(千代田区)は、正社員就職を目指す三十代のための「ネクストジョブ」事業を一昨年秋から始めた。キャリアカウンセリングに加え、正社員の心構えなど基本から学ぶセミナーや企業の人事担当OBら「ジョブコーディネーター」の面談を受け、仕事を探す。
今年六月までに、利用者約二千二百人のうち約千人が就職し、うち六割が正社員に。正規雇用対策担当の長崎純一課長は「セミナーで同年代の仲間ができると、やる気が高まるようだ」と話す。
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制約が多く、非正規を選ばざるを得ないひとり親家庭への支援も。NPO法人「Wink」(東京都新宿区)は今春、シングルマザーら正社員希望者と企業のマッチングをする事業を始めた。
「子どもが小さい間、会社が理解を示せば、その後は会社に貢献しようと、いい人材に育つ。そういう企業を増やしたい」と新川てるえ理事長は話す。
ビセオの吉田代表は「厳しい時代だが職業人、親、子ども、地域の一員など人生の中の自分の役割を考えながら、前向きに幅広く、仕事を探してみて」とエールを送る。
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