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【経済】新規就農者数11%増 リストラや定年退職で

2010/08/19

 2009年に新たに農業を始めた新規就農者数が前年より11・4%多い6万6820人だったことが、18日までに、農林水産省の調査で分かった。農家の高齢化は進んでおり、子どもが年取った両親に代わり農家を継ぐケースなどが増加したことが主な要因。農業生産法人への就職者数などを含む現行の新規就農者の調査を始めた06年以降、新規就農者の増加は初めて。

 同省は、リストラされたり定年退職した人が実家の農家を継ぐケースが増えたことが背景にあるとみている。

ただ雇用情勢の悪化が就農者数増の原因の一つで、減少傾向に歯止めがかかるかどうかは不透明だ。

 内訳を見ると、農家出身者が実家を継いだケースが15・6%増で5万7400人。継ぐのではなく新たに農業経営を始めた人は5・6%減の1850人。増加が続いていた農業生産法人などへの就職者は9・9%減の7570人だった。不況の影響により、農業生産法人が新規採用を手控えたためとみられる。

 年齢別では、減少が続いていた60歳以上が20・8%増。39歳以下と40~59歳も4・2%と2・5%それぞれ増えた。新規就農者数のうち約半数が60歳以上だった。

 農水省は「企業のリストラで職を失った人や、退職期を迎えた団塊世代の農家出身者が増えているのではないか」と説明している。

 新規就農者の調査は、農林省の現状を調べた「2005年農林業センサス」に基づき作成した名簿からサンプルを抽出するなどして全体を推計した。

 新規就農者数が増加に転じたのは、食の安全・安心への意識の広がりや、農業生産法人の増加でここ数年間は就職の機会が増えるなど、農業への注目度が高まっていることが背景にある。

 ただ給料が支払われる農業生産法人に就職した場合でも、作柄次第では収入が大きく変動するリスクは残る。このため農家出身者が農家の家を継ぐケースが多くなる傾向は依然として続く見込みだ。

 農薬が残留した輸入米の違法転売事件などを受け、国内の農業への注目が高まっていることも一因、就農相談を行う「全国新規就農相談センター」は「(就農希望者の背景として)食の安全などへの関心を挙げるケースが多い」と説明している。

 大規模な農地を手掛けることが多い農業生産法人の数も最近では増加傾向にある。農業生産法人が農業だけでなく、食品加工、観光といった分野にも手を広げていることから入手が必要になっていることもある。就職難の中、農家出身ではない人にとっても雇用の受け皿として存在感は強まっていると言える。