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やってみました 記者たちの職業体験ルポ ロープ製造業

2010/08/11

誇りと責任糸に込め

 蒲郡市は知る人ぞ知る繊維ロープの産地。漁業用や船舶用に欠かせない、頑丈で安全性の高いロープはどのように作り出されているのか。製造工場が集まる同市形原町にある「三栄製綱」におじゃました。
 社長の大竹宏幸さん(51)の案内で、ロープの製造工程を見学させてもらった。ロープの基となる原糸は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの原料樹脂を熱して溶かした後、引き伸ばす。「熱いから気を付けて」と大竹さんの声。樹脂を溶かす温度は最高で二百六十度近くになり、機械に近寄るだけで、熱気でどっと汗が噴き出てくる。

 出来上がった原糸を複数本より合わせてできるのが「ヤーン」。それをまた複数本より合わせた状態が「ストランド」。ストランドをさらにより合わせてようやくロープが完成する。

 ストランドの本数が三本なら「三つ打ち」、八本なら「八つ打ち」などと呼ばれる。同社では、太さや強度、原料、色などに応じて製品パターンは約三万に上るという。

 工程のほとんどが機械化されている中、数少ない人の手が必要な作業を体験させてもらった。糸やヤーンをより合わせる過程で、糸が途切れた時、次の糸を結んでつなぐ作業だ。

 機械を止めてやらせてもらったので、作業自体はそう難しくなかったが、実際には何台もの機械が同時に糸を巻き取っており、糸が途切れるタイミングを見越して、次の糸を用意し、端と端とを素早く確実に結ぶことが求められる。太いストランドの場合、結ぶことができないため、端の部分をいったんほぐしてから、両端を手でより合わせる職人の技が必要になってくる。

 海上や工事現場などで、時には人の命にかかわる使われ方もされるロープ。「だからこそ、安心して使ってもらえる製品をつくるのが使命」と大竹さん。細い糸をより合わせて少しずつ太くしていく工程には、製品への誇りと責任が込められているように見えた。(中山聡幸)

 【メモ】蒲郡市は、全国の繊維ロープ生産量の30~40%を占める産地。明治時代の麻糸の生産に始まり、形原地区を中心に地場産業として発展してきた。かつてはほとんどが漁業用だったが、現在では工事現場の安全ロープやレジャー用などさまざまな用途に使われている。

多くの糸をより合わせて1本のロープが出来ていく=蒲郡市形原町で
多くの糸をより合わせて1本のロープが出来ていく=蒲郡市形原町で