2010/08/07
空気中だけでなく、テーブルやいすの上に付着した菌やウイルスを死滅させる空気清浄機「エアメディック」が注目を集めている。天然由来成分の殺菌・抗ウイルス剤をまくタイプで、健康には無害だ。開発した化学薬品会社・アルケミ(岐阜県多治見市)は、自社に研究拠点を持たないが、豊かな発想で次々にユニークな商品を生み出している。
2000年に創業。波多野博紀社長(43)は「これからの時代は環境分野だ」と考え、光触媒分野に参入した。だが、40人の社員に研究者はほとんどいない。波多野社長自身も「最終学歴は中卒。化学の専門的なことはさっぱり分からない」と苦笑する。
強みは素人集団ならではの「自由な発想」による商品企画力だ。専門的な知識にとらわれない奇抜なアイデアを提案し、大学発ベンチャーなどの研究機関に素材や原料の研究を依頼。「光がなくても殺菌作用がある触媒」「口に入れても害のない洗浄剤」「水にぬれたまま塗れるカーワックス」など数々のヒット商品を共同開発してきた。
売上高は09年度に前年度比35%増の27億円と好調、10年度は30億円を超える見込みという。近く、北米や東南アジアへも進出する。
これまでは、主に業務用製品だったが「生き残るためには、消費者に直接使ってもらえるものを」と、開発に着手したのが空気清浄機。「自分たちで需要をつくる」「他社の商品や価格に追従しない」を基本理念に、イオンで殺菌する通常の空気清浄機ではなく、「薬品会社らしく」薬剤を散布するエアメディックを昨秋に発売した。
直径24センチの円盤形で、スイッチを入れると部屋全体に専用の薬剤を散布。1台で24畳分の広さまで対応し、部屋中の菌やウイルスを死滅させる。稼働中は側面が青く光り、「インテリアにも最適でしょ」と波多野社長。新型インフルエンザの流行が懸念されていた時節柄、空気清浄機は世間の関心を呼び、売り上げは上々といい、ことし10月に上海万博での展示も決まった。
このほか、天然由来成分の洗浄剤は2度ぶきが要らないことから、環境に優しい商品として注目されている。波多野社長は、「今後も化学物質の代わりになる天然材料を次々に開発し、ウイルスや人工物など、さまざまな有害物質に対応できる天然薬品を生み出したい」と意気込んでいる。
(志村彰太)
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