2010/08/06
男性の育児参加を促すことなどを柱とした改正育児・介護休業法が六月末に施行された。働く母親に仕事と子育ての負担が重くのしかかり、専業主婦も孤立しがちな現状を打開するのが狙い。法改正で男性の育児休業取得に弾みはつくだろうか。 (福沢英里)
「想像以上に大変でした」。昨年十二月から約二カ月間、育児休業を取得した吉田信二さん(32)=愛知県半田市=は、長男(1つ)と二人きりで過ごした日々を振り返る。「一分でも早く帰って手伝ってほしい、と言っていた妻の気持ちがよく分かりました」
吉田さんは、住宅設備メーカー「INAX」で洗面化粧台の開発を手がける。会社の先輩でもある妻の裕子さん(43)の妊娠が分かった二〇〇八年初めに育休取得を宣言。一年以上先のことでもあり、上司はあっさり受け入れてくれた。
INAXでは、夫婦合わせて一年半の育休が認められている。男性の育休取得者はそれまでに十四人。吉田家では、先に裕子さんが一年四カ月間休んだ。
長男の好きな遊びや一日の過ごし方などの引き継ぎは受けたが、実際に子育てを一人で担うのは大変だった。おむつを替え、離乳食を作って食べさせる。散歩、昼寝、買い物、夕食の支度と、あっという間に一日が過ぎた。「社会から取り残されている」という不安もあった。
夫婦とも育休を取ったことで「互いを思いやることができ、夫婦のきずなが強くなった」と吉田さん。育休は終わったが「なるべく早く帰って子育てを分担したい」と育児参加への意欲は強い。
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改正育児・介護休業法では、これまで「子が一歳に達するまで」だった育休期間が父母ともに取得すれば「一歳二カ月まで」に延長された=表。さらに妻が専業主婦でも取得できるようになり、制度上は男性が育休を取りやすくなった。
厚生労働省が七月に公表した調査では、〇九年度の男性の育児休業取得率は1・72%と過去最高に。だが一七年に10%とする国の目標には程遠い。
取得が進まないのはなぜか。ベネッセ次世代育成研究所(東京)が昨年、首都圏の乳幼児の父親を対象に実施した調査で、育休を取らなかった父親が主な理由に「職場に迷惑をかける」「忙しくて取れそうもない」を挙げ、こうした“思い込み”が壁となっていることが分かった。
企業も男性の育休取得に消極的だ。残業を多くこなす働き盛りの男性社員に休まれると困る、などの意識があるとみられる。だが、代替要員の確保が難しい中小企業でも、積極的に取り組んでいる例がある。
従業員二十七人の環境測定会社「三協熱研」(名古屋市)は、法施行を前に昨秋から、男性も育休を取りやすくなると社内に周知。二月に初めて、男性社員が二週間の育休を取得した。
総務グループ次長の佐伯剛生さんは「育休は事前に予定が分かるので新婚旅行と同じ。そう考えれば企業も対応できる」と指摘する。
休みを増やすには、業務の効率化が必要になる。育休制度に詳しい大和総研(東京)経営コンサルティング部コンサルタントの広川明子さんは「父親の育児参加をうたうより、業務効率化を強く打ち出せば、誰もが受け入れやすく企業内で取り組みやすい」とアドバイス。「長時間労働をやめる効果を職場全体で実感でき、同僚の負担感も軽減されれば、男性の育休取得は進む」と解説する。
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