2010/07/23
夏休みが始まった。親が働いている小学生は、学童保育所で勉強したり、遊んだりする場合が多いが、開所時刻の関係で、親が仕事に間に合わないなどの問題も。核家族化で子育て環境が変化し、女性の働き方も多様になる中、支援のあり方が問われている。 (福沢英里、境田未緒)
小学一年の子がいる岐阜県のパート女性(34)は夏休み前、居住する市が学校内で運営する学童保育所が午前八時半からと知り、困り果てた。
子どもの預け先がないため、土日休みの条件でやっと見つけたパートの仕事は九時から。通勤に三十分以上かかり、八時半に子どもを学童保育所に送っていては遅刻する。市の担当者は保護者説明会で「開所時間前に子どもを学校に置いていくなどした場合、やめていただく」とくぎを刺した。
女性は、市に登録している有償の子育てサポーターに、開所三十分前から教室で子どもを預かってもらうよう交渉。「うちの子も」という声が複数あり、八時から預けられることになった。
ただ、毎日来られるかは未定。女性は「生活のために働き、学童に預けざるを得ない。もっと利用しやすくしてほしい」と訴える。
全国学童保育連絡協議会(東京)の二〇〇七年の長期休暇中の受け入れ時間に関する調査では、八時前から子どもを受け入れている学童保育は、わずか11・5%。八時台の受け入れが75・2%と大半を占める。
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愛知県江南市では二年前の夏休みから、長期休暇中の学童保育の開所時刻(平日)を八時半から七時半に繰り上げた。市子育て支援課の佐藤和弥課長は「以前から母親の強い要望があり、予算化して対応した」と話す。
会社の始業に間に合わず、以前は近くに住む同級生の母親に子どもを預け、一緒に送ってもらっていた同市の女性会社員(34)は「学童に送ってから余裕を持って出社でき、とても助かる」と喜ぶ。
父母らがNPO法人をつくって運営している浜松市の学童保育「しまうまクラブ」は、午前八時の開所。利用者がいて、預かれる親がいる場合は、七時に開けることもある。お盆は原則休みだが、必要があれば指導員に出てもらったり、都合のつく親が見たりと、柔軟に対応する。
今年から、長期休暇中の保育を学区外からも受け入れ始めた。NPO法人理事の永井克典さん(49)は「従来の学童保育の枠組みでは家庭の実態に合わなくなっており、学区外からも困った親が駆け込んでくる。行政が幅広いニーズをくみ取って対応すべきだ」と注文する。
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学童保育の半数は、対象児童が「小三まで」で、子どもが高学年になった親の悩みも大きい。
東京都文京区の育成室(学童保育)を卒業した子の父母らが夏休み前に開いた集会では、高学年の子を持つ親から、休み中の病気や事故時の対応、鍵の管理を心配する声が多く聞かれた。
「大人が不在の家がたまり場になるのでは」と心配する親も。子どもが小学校を卒業した先輩父母からは「よく遊びに行く友達の親と情報交換をする」「鍵は必ず持ち歩くよう、繰り返し言い聞かせる」などのアドバイスがあった。
地域によっては、そもそも定員がいっぱいで学童に入れず、何とか一学期をやりくりして、夏休みでまた困難に直面する親子も。母親らは、昼休みに家に帰って子どもの様子を見たり、夏休み限定の習い事やキャンプに行かせたりと、何とか乗り切ろうとしている。
文京区の「千石育成室OB父母の会」の渡辺毅さん(58)は「いざという時に頼れる大人を近所にどれだけつくっておくかも大切」と指摘。「子どもと夏休みの過ごし方をよく話し合い、ひと夏を乗り越えれば、その経験が来年以降の夏休みにも生きてくる」と働く親たちにアドバイスしている。
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