2010/07/16
「勤務経験がなくては、採用は難しい」
静岡県沼津市の牧田勇樹さん(18)は四月以降、製紙会社や製材会社など十数社の入社試験を受け、面接官から同じ言葉を聞かされ続けている。
今春、地元高校を卒業。在学中は、警察官採用試験の勉強に専念したが不合格。専門学校進学も考えたが、最終的に「早く自立したい」と、卒業して就職活動を始めた。
だが、「きちんと就活すれば何とかなる」という考えは甘かった。「就職に役立つかも」とフォークリフトの免許を取ったが、採用につながらない。「就活を投げ出したいくらい」と力なくつぶやいた。
いったん高校を卒業すると、現役時代よりさらに厳しい就活が待っている。在学中は学校との二人三脚だが一転、自助努力を強いられる。同じ未就職でも、大卒者とは「学歴」が違う。「新卒枠」からは外れ、経験者が競争相手となる。
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こうした状況を受け、高卒の未就職者に職能を身に付けてもらおうと支援に取り組む自治体も出ている。
福井県は、国の緊急雇用創出事業臨時特例交付金を利用し、本年度、人材派遣会社に委託して未就職者が計六カ月間、研修・就業体験を受けられる事業を始めた。
受講生は派遣会社の契約社員となり、給料として十三万~十五万円を受け取れる。期間終了後は、就業体験先や他企業での正規就職を目指す。
県労働政策課の増田賢和総括主任は「給料が出るので受講生も真剣。経済的支援にもなる」と語る。高校卒業後の職歴に空白が生じない効果もある。
事業には、大卒者らも含め五十三人が参加。今春、福井市内の高校を卒業した男性(18)は「アルバイトから正社員を目指すより、確実に就職できると思った」と応募の動機を語る。現在はパソコンなどの基礎研修を受けており、「高校時代の友人はみんな正社員。半年間頑張り、早く追いつきたい」と意気込む。
愛知県も、福井県と同様に給料が出る研修・就業実習事業を今月から始めたところ、二百人の定員に八百人を超える応募があった。
県の委託で百人を雇用した人材派遣会社インテリジェンスの西永篤史スーパーバイザーは「高卒者の意欲は、大卒者より高いくらい。社会経験が乏しく、フリーターになりやすい高卒者にこそ、研修や支援を充実させる必要がある」と指摘する。
一方、未就職者のニーズに合わなかった事業も。愛知県は、離職者向けに実施している無料職業訓練に四月、高卒未就職者向けの半年コースも設けたが、定員三百五十人に対し、応募は三十人にとどまった。
県就業促進課は「PRはしたが、座学が多く、訓練内容が高卒者には合わなかったのかもしれない」と、ニーズをくみ取る難しさを話している。
(片山健生、境田未緒)
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