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【社説】相次ぐ労災 「職場の安全」点検急げ

2008/10/01

 安全第一の職場で死亡事故が起きたり過労で心の健康が保てなくなるなど、労働災害が依然として目立つ。国や企業は職場環境を早急に再点検し、労働者の安全と健康をしっかりと確保すべきだ。

 「送電線の鉄塔が壊れて作業員四人死傷」「建設中の超高層マンションで二人乗りゴンドラ墜落」「港湾作業中にワイヤが切れて多数死傷」-最近相次いで発生した悲惨な事故だ。東京都内で起きた下水管工事での五人死亡事故はまだ記憶に新しい。

 突然の集中豪雨などは事前対策が難しかったかもしれない。だが多くは人為的なミスが原因だ。建築現場や土木工事、港湾荷役などは昔から労災多発職場とされてきたのだから、普段から万全の事故防止策をとっていたはずだ。

 それにもかかわらず労災が絶えない。経費節減の圧力や団塊世代の退職による安全意識・技術の断絶などが指摘される。「この程度までは大丈夫」と手を抜けば労働者だけでなく企業も痛手をこうむる。景気が後退しても職場の安全確保に手を抜いてはならない。

 ただ労災全体をみると被災者や死者数は減少傾向にある。死者は一九六〇年代は年間六千人を超えていたが、昨年は千三百五十七人と過去最低になった。今年一-八月も七百四十九人で前年同期比四十九人の減少だ。長年取り組んできた安全対策の成果と言える。

 その一方、一度の事故で三人以上が死傷したり病気にかかったりする重大災害は増加気味である。昨年は二百九十三件と前年比減だったが、八五年比では倍増だ。交通事故や食中毒などが目立つ。

 政府は本年度から第十一次労働災害防止計画をスタートさせた。五年間で死者数を20%以上、死傷者数も15%以上削減する。目標達成には経営者と現場の管理監督者に加え労働組合の責任も大きい。労働基準法や労働安全衛生法の厳格な運用、正規雇用の拡大など労働者重視の経営が不可欠だ。

 最近の労災をみると過重労働や職場のストレスが引き金となった脳や心臓の疾患、うつ病などの精神障害が増加している。とくに過労が原因として労災認定された過労自殺は昨年度、未遂を含め八十一人と過去最悪となった。派遣労働者の死傷者数も製造業を中心に急増している。

 きょうから全国労働衛生週間が始まる。「明るい職場と健康づくり」を訴える。労働者の心と体を守る運動が形骸(けいがい)化していないか、これも再点検が必要である。