2010/07/01
生活の糧となる「雇用」と、日本経済のすそ野を形成する「中小企業対策」。いずれも有権者の関心は高く、各党も政策を競っているが、実際の政策効果の判定は容易でなく、政策テーマとしては難問の1つだ。
Q 最近の雇用情勢は。
A 5月の完全失業率は前月比0・1ポイント上昇の5・2%と、3カ月連続で悪化した。リーマン・ショック後に急速に上昇し、2009年7月には過去最悪の5・6%を記録したが、雇用調整助成金制度の拡充などでその後は改善し、ことしの1月は10カ月ぶりに4%台に低下していた。
Q 再び失業率が上昇した背景は。
A 景気の先行きに対して慎重な見方をしている企業が多く、人材に対する採用意欲が盛り上がらないのが原因だ。公共工事の抑制に伴い建設業で失業者が増加傾向を示しているのも目立つ。政策面では、格差社会への批判から非正規労働者を保護する動きが強まっているのも失業率がなかなか下がらない遠因と言われている。
Q 非正規労働者保護がどうして失業率高止まりにつながるの。
A 雇用情勢が今回と同様悪化した2000年代初頭、規制緩和が後押しをして派遣労働が雇用の受け皿の役割を果たした。今は“非正規切り”の批判もあって、企業は非正規労働者の採用自体にも慎重になっている。
Q 雇用を維持したまま休業する企業に支払われる雇用調整助成金の効果は。
A 失業防止には大きな効果をもたらした。雇調金対象者数は昨春250万人を超えたが、最近は企業の操業率回復で半分近くにまで減ってきた。雇調金がなければ失業率は2けた近くまで上昇していたとみる専門家は多い。ただ、雇調金は一時しのぎにすぎず、今後の景気動向次第で新たな失業者になる“予備軍”との指摘もある。
Q 中小企業政策を公約に盛り込む政党が多いのはなぜ。
A 中小企業は全国に約420万社あって日本企業の99・7%を占める。政党には無視できない存在だ。ただ、中小企業を取り巻く環境は、昨秋の民主党政権発足時とは変わってきた。
経済産業省が発表した4~6月期の中小企業景況調査は、業況判断が5期連続で改善している。ただ、経産省幹部は「金融円滑化法などで倒産は防げたが、先送りされたという面もある」と指摘。今後、景気が上向けば万事うまくいくが、悪化した場合、たまったうみが一気に出る可能性もある。
(花井勝規、金森篤史)
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