2010/06/30
結婚できる安定した仕事を 雇用のミスマッチ解消すべき
「仕事さえ見つかれば、すぐ結婚したい」。相模原市の田村勝美さん(43)は昨年、アルバイト先を解雇され、失業手当でしのぐ。約15年ずっと非正規労働だ。「『明日から来なくていい』の一言で職を失う。もう非正規は嫌だ」
2年前から結婚を前提に付き合う女性(39)は、山形市に住む情報通信会社の契約社員。手取り約15万円の月給では、結婚資金もたまらない。
田村さんはパソコンを覚えようと考えたが、応募が殺到し職業訓練受講の選に漏れた。失業手当は今月で切れ、来月から生活保護を受ける。結婚はさらに遠のく。
互いを追い詰めないよう会話から「結婚」の言葉が消えた。でも本音は違う。「40歳までに一緒になりたいし、子どもも1人は欲しい。彼に、長く続けられる仕事が見つかれば、話を進めたい」と女性は言う。
子育て支援が必要なのは、子どもがいる家庭だけではない。結婚して子どもを産みたいと考える若者層には非正規労働者が多く、経済的理由から結婚に踏み切れない人たちがいる。
東京都杉並区の派遣労働者の女性(28)の住まいは、家賃月5万9000円のワンルーム。「2人で暮らすなら2Kは欲しいが、今の収入では無理」
有名私大を出たが、「正社員になったことはない」。介護サービス会社で事務を担当。手取りは月約15万円だ。婚約中の男性(44)も長年、非正規で働き、今は失業中。新居を借りるには共働きが不可欠だが、男性の仕事は見つからない。今の状況では、子どもは遠い夢。「彼も欲しいと言うし、いたら楽しいと思う。でも雇用と収入が安定しないと難しい」
未婚の若者が年々増加。特に男性の未婚率が高くなっている。
第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の松田茂樹主任研究員(家族社会学)は「非正規労働者は賃金上昇が見込めず、失職リスクからも逃れられない。子育てや住まいの費用を賄えるだけの賃金保証がある正社員と違い、家族を形成しにくい」と指摘する。
厚生労働省の調査で、2002年に20~34歳だった男女の結婚状況は、男性で08年までの6年間に結婚したのは、正規労働者が30%なのに対し、非正規は13.3%だった。
結婚しても将来への不安は残る。東京都荒川区の区立図書館の非常勤職員、藤井のぞ美さん(34)は、夫も区立図書館の非常勤職員(38)。長男(5つ)を保育園に預けながら働く。2人の年間所得は計約520万円あるものの、身分は不安定だ。「トップの考え1つで、2人一度に職を失いかねない」。働き始めて10年目になるが、契約は単年度更新だ。
雇用安定のため、国は非正規労働者の就労支援に取り組み、雇用保険の対象を一部の非正規に広げた。労働者派遣法改正も国会で審議中だが、雇用と収入が安定した生活はなかなか実現しない。
松田主任研究員は「介護など人手不足業種に、ハローワークや職業訓練を通じて非正規を振り分け、雇用のミスマッチを解消すべきだ」と対策を求める。
参院選マニフェストでは、民主党は非正規労働者の就職支援体制整備、国民新党は正規雇用への転換対策を盛り込んだ。自民党は新卒者の100%就職推進、公明党は非正規労働者向け低家賃住宅整備や雇用保険対象外の失業者の職業訓練充実、共産党は非正規労働者が利用しやすい育児介護休業法の改正、社民党は同一価値労働・同一賃金の実現などを訴えている。 (服部利崇)
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