2010/06/16
肌に悩む人を笑顔に
今や全国に一万店舗、市場規模は四千億円というエステティック業界は、一九九〇年代以降に急成長した分野だ。数は少ないが、男性エステティシャンも現れ始めている。人に癒やしを与える仕事の内幕を、おっさん記者がのぞいてみると-。
刈谷市小垣江町のエステサロン「空(くう)」で体験したのは顔エステ。施術は客の肌のチェックから始まる。拡大鏡で見ると、毛穴まで手に取るように分かる。
「これはシミで、左右対称なのは肝斑(かんぱん)。肝斑は女性ホルモンの乱れが原因なので、エステでは取れない」
医者みたいなことを言う、この道十年の江坂貴久美さん(48)は、皮膚科学をはじめ解剖生理学、栄養学などエステにかかわる十七科目を専門学校などで学んでいる。
美白効果のある化粧水などを顔全体に十分補給し、いよいよマッサージに移った。
おでこや目の回り、口角、ほお、あごを手のひらや指先を使ってマッサージしていく。「手の動きをお客さんの呼吸リズムに合わせるのがこつ」で、客の大半は気持ち良さで眠りに落ちてしまう。
記者の手つきがぎこちないのは仕方ないにしても、どうも目の前の女性の胸元が気になって…と、余計なことを考えていたら、江坂さんから「マッサージは顔の筋肉を引き上げるように」と鋭い教育的指導が入った。
男性エステティシャンの草分け的存在で、福井県鯖江市で店を開く祖父江利光さん(39)がたまたま所用でこの店に来ていた。サラリーマンだった十八年前、エステに行きニキビが消えたのに感動。「自分もエステティシャンに」と一念発起した。
「肌にコンプレックスを持つ人の中には、他人に会いたくないとまで思い詰めている人もいる。そんな悩みを抱えた人を笑顔に変えるのがエステティシャンの喜び」と話す。
ただ業界をめぐっては、強引な勧誘などのトラブルが年間一万件も報告されている。店の良しあしはどこで見分ければいいのか。
江坂さんは、業界団体発行の認定書の有無や事前カウンセリングの丁寧さなどのほかに、もうひとつ意外なポイントを教えてくれた。
「店内の花が生花か造花かを見てほしい。手間のかかる生花が置いてあるということは、生身のお客さんの施術も手抜きしないという姿勢の表れですから」(浅井正智)
【メモ】公的資格はないが、専門学校で300~600時間の授業を受け、その後サロンで腕を磨いていく。全国にエステティシャンは4万人いるとされ、うち男性は数パーセント。江坂さんによると、ベッド1台で月100万円売り上げれば理想的。
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