2010/06/10
賃金アップなど介護従事者の待遇改善を行うため、介護報酬が2009年4月から3%増額されました。増額によって、本当に介護従事者の賃金は上がったのでしょうか?厚生労働省の実態調査によると、改定前に比べ、平均で8930円上昇しました。しかし上昇幅は5000円未満が最も多く、訪問介護では、平均以下の賃上げでした。また、賃上げの予定がない事業所も13%あるなど、介護の分野、事業所ごとの格差も見えてきました。
急速な高齢化にともない、介護分野で働く人材の確保が重要になっています。国の試算では一四年には新たに二十万人から四十万人が必要とされています。しかし、賃金が低い、待遇が改善されないなどで離職率も高いままです。
このため、自民党政権では〇九年の介護報酬改定で3%増額、介護従事者の賃金引き上げにつなげるとしていました。「給与が二万円アップ」との説明もありました。しかし厚労省が行った〇八年九月と〇九年九月の実態調査では、給与などを引き上げたのは事業所の68・9%、額は平均八千九百三十円でした。
増額幅を見ると、五千円未満が最も多く、下がった人も多くいます。介護現場や他の調査で「平均で約九千円上がったといわれても実感がない」ことを裏付けています。
●加算取れない訪問系
格差も問題です。サービス別では、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が一万二千百六十円のアップなど、老人福祉施設など施設系が高い傾向にあります。一方、訪問介護事業所は五千五百六十円と平均以下の上げ幅にとどまりました。
また、給与などを引き上げない事業所は、業務負担の軽減など処遇改善なども行わない傾向にあり、事業所ごとの格差が鮮明になっています。
なぜでしょうか?
〇九年の報酬改定は、加算中心でした。加算を取得したか、しないかが影響しています。老人福祉施設、老人保健施設など施設系では加算取得率は80から90%台と、報酬改定を生かすことになりました。一方で訪問介護などの取得率は15%前後と低迷しています。
さらに、併設サービスなしの事業所では、訪問介護で24%、居宅介護支援事業で33%が給与の引き上げを予定していません。併設サービスがないのは、単独で比較的規模の小さな事業所と考えられます。
結局、規模の小さな事業所が多い訪問介護では、利用者負担が上がる加算も取りにくく、処遇改善にも結びついていないのではないか、と考えられます。
●交付金でどうなった
今回の調査では、〇九年十月から受け付けを開始した、給与を平均一万五千円引き上げる「介護職員処遇改善交付金」については含んでいません。交付金は都道府県へ申請、期間は一一年度末までですが、政府は延長する方針を示しています。申請率は一〇年三月末で全国平均82%でした。
介護の人材確保のために、処遇改善が必要なのは言うまでもありません。民主党のマニフェスト(政権公約)では、介護労働者の賃金の「月額四万円引き上げ」を盛り込んでいます。今後、処遇改善が進んでいくか見守る必要があります。
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