2010/06/02
もっちりご飯に濃いみそベースのたれ。少しこげた香ばしさが食欲をそそる五平餅(もち)は、広い豊田市内のどの地区でも、看板を掲げた飲食店が見つかる。一月には市内の販売店五十五店で「学会」も発足。郷土食として団結してPRに力を入れ始めた。同市足助町の三州足助屋敷の桧茶屋で、味と技の伝授を願った。
茶屋で料理を担当する河合広美さん(60)は、趣味で作っていた期間を含め、四十年近く五平餅を作り続けるベテランだ。まずは生地づくり。すり鉢に地元産の蒸したうるち米を入れ、棒でつぶしていく。力任せの記者に「完全につぶしたらだめ。七分くらいを心掛けて」と注意が飛ぶ。力加減を考えないと、ベタベタの五平餅になる。
生地をくしに付け棒状に。両手で挟んでぞうり形にする。手でのばすことで、もちもち感が出る。「もてなしの心を込める意味もある」が、こだわりの理由だ。
こんがり焼き色が付いたところで、自家製みそがベースのたれを塗る。ヘラで均等にのばすのにひと苦労。仕上げの焼きで焦がしてしまった。河合さんは「千本も焼けば加減が分かるよ」と慰めてくれた。加減を熟知した河合さんは、二十分で百本以上を仕上げる。
二十二年前に岡崎市の家具製造会社を辞め、地元の足助屋敷にUターンした。料理全般を学んだが「子どものころは来客時のごちそう。会社員時代もバーベキューで必ず作っていた」と、五平餅へのこだわりは強い。
砂糖が貴重な時代に生まれた五平餅は本来、みそのしょっぱさが味の基本。だが当初、観光客には不評だった。たれにピーナツなどを混ぜ、甘みを付けると売り上げが伸びた。郷土食を知ってもらおうと、小学校で体験教室を開いている。
遠来の客や体験教室の子どもたちが、何度も食べに来てくれるのがやりがいという。おやつや軽食としてだけではなく「立派な食事として認めてもらえるよう頑張りたい」と、今も改良を続けている。(渡辺陽太郎)
【メモ】桧茶屋で五平餅を作るには、三州足助屋敷を運営する三州足助公社へ入社する必要がある。採用は不定期。学歴不問で資格は必要ない。アルバイトの募集をすることもある。五平餅はすぐ作れるようになるが、1日に1000本は焼かないと、忙しい時期に対応できない。初任給は16万円ほどで、実績に応じ昇給。アルバイトは時給800円。
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