2010/04/28
傷めぬよう細心の注意
ミカンは蒲郡を象徴する農産物。特に温室ミカンは全国でも有数の産地だ。夏の贈答品として浸透している温室ミカンはどのように育てられているのか。収穫の時期を迎えた蒲郡市神ノ郷町、大森千彰さん(43)のハウスにおじゃました。
まず手渡されたのは収穫用のはさみと肩からかけるかご。「とりあえず色づいているものを切ってください」。はさみを入れるのは二回。はさみが実に当たらないように、まず、実から一センチほど離れた枝を切る。次に実に残った枝を根元から切る。これは集めた時にほかの実に傷をつけないためだ。
ほかの木からは、パートの女性たちが「パチン、パチン」とリズミカルに切っていく音が聞こえてくるが、「傷つけてはいけない」と思うとどうしても慎重になってしまう。
かごがズシリと重くなってきたら、運搬用の二十キロ入りコンテナに移す。かごを逆さまにしてガバッとあけるだけではなく、コンテナの底には緩衝用のマットを引き、ここでも実を大事に扱う。
実の状態に細心の注意を払うにはもちろん理由がある。蒲郡の温室ミカンは、一個五百円近くになることもある高級品。それだけに市場や消費者の要求も厳しく、傷んだり腐ったりしていると即クレームが入るのだ。
コンテナに実がいっぱいになったら、専用の台車に乗せてハウスの出口まで運ぶ。ハウス内はたくさんの実をつけた枝が生い茂り、枝に体が当たらないようにルート選択するのも一苦労。コンテナを二個積んだ台車を引っ張り、出口にたどりついた時には息が荒くなっていた。
「自分の納得できるものを作って喜んでもらうのが一番。よりよいミカンづくりにゴールはない」と大森さん。労を惜しまない作業の一つ一つに生産者のこだわりが見えた。(中山聡幸)
【メモ】蒲郡柑橘(かんきつ)組合では、温室ミカンの品種を糖度が高く内袋が柔らかい「宮川早生(わせ)」に統一。「蒲郡温室みかん」のブランド名で市場の高い評価を得ている。今年は156戸が計46ヘクタールで栽培。収穫は9月ごろまでで、出荷見込みは2215トン。
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