2010/04/07
すし店などの外食業界で使われる業務用わさびで国内シェア4割を誇る、わさび加工メーカーの老舗「金印」(名古屋市中川区)。1980年代から欧米に拠点を置いて「WASABI」の普及に努めるなど、革新的な企業風土で知られる。新たに化粧品や花粉症対策商品など、わさびの有効成分を生かした機能性商品が第2の中核事業として成長中だ。(瀬戸勝之)
今年2月。金印会長の小林一光さん(72)はロサンゼルスにいた。目的は米健康食品メーカーとの打ち合わせ。「わさびの成分を製品に使わせてもらえないか」との打診を受け、市場調査を兼ねた訪米だった。まだ交渉は緒に就いたばかりだが、小林さんは「手応えは十分」と意気込む。
金印は、抗酸化作用や血流改善作用があるといわれるわさびの有効成分「わさびスルフィニル」の抽出に、特許技術で成功。これを契機に2004年に機能性商品事業に乗り出し、第1弾として、乳酸菌を配合した栄養補助食品「わさび&オリーブ」を発売した。
国内に3カ所の研究所を持ち、わさびの辛みと香りを逃さない「超低温すりおろし製法」を開発したり、北海道で品種改良したワサビの栽培に乗り出すなど、業界内で先駆的な取り組みを続けてきた金印。
新たな事業でも、ワサビの葉に含まれる成分を配合した化粧品、わさびの香りを生かした花粉症対策のマスク用スプレー、のどあめなどを次々と市場に送り出している。
小林さんは「ワサビは飛鳥時代から薬草として使われてきた。優れた機能性は現代にも役立つはずだ」といい、機能性商品だけで5年後に10億円の売り上げを目指している。
一方、本業の「WASABI」でも、親交の深いフランスの三つ星レストランのシェフに日本原産の本ワサビの栽培指導を行い、昨年、4年越しの努力が実って初収穫に成功した。
こうした地道な取り組みを通じて「日本の食文化全体を伝えていきたい」と小林さん。その視線は、大きな可能性を秘めた機能性商品の海外展開を見据えている。
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