2010/03/25
シャフト調整に苦戦
二十代後半の男性ならば少年時代、一度は単三電池とモーターで走るおもちゃの車、ミニ四駆で遊んだことがあるのではないだろうか。タイヤやシャシーを紙やすりで削り、最速のマシンを作ろうと友人と競ったものだ。
かつて自動車はあこがれの存在。本物の内部がどうなっているのか知りたくなり、豊橋市の自動車ディーラー東愛知日産豊橋下地店を訪ね、自動車整備士の仕事を体験させてもらった。
“教官”は二十五年間、自動車整備士一筋のエキスパート、山岸英括(ひでかつ)さん(43)。早速、修理中の車の点検作業の指導を受けた。
赤と灰色の上下一体の作業着を身に着け、作業場に出ると、気分はすっかり技師。エンジンに触れるかと思ったら、山岸さんはコンピューターの前で、数値の入力をしている。「きょうは、アライメントをやるよ」と一言。アライメントとは、タイヤと車軸をつなぐシャフトのゆがみを直す作業のこと。特殊なセンサーを四輪に取り付け、モニターで微妙な回転のずれを読み取る。「病院でのCTスキャンみたいなものだ」
目の前のワゴン車の車輪の分析結果をパソコンで見ると、左後輪の数値が異常に下がっていた。シャフトがゆがんでいることを示しているのだ。「修理書には左後輪を少しぶつけたと書いてあったけど、思った以上に回転の軸が大きくずれている。放置するとタイヤが摩耗しやすくなるんだ」と山岸さん。
ゆがみを直そうと早速、車体の下にもぐり、スパナでシャフトの長さを調節する作業を手伝わせてもらった。記者がボルトを締めると、パソコンの数値が急上昇。強く締めすぎて逆方向にゆがんでしまったのだ。
焦って元に戻そうとすると、今度はそのまた逆方向にゆがんでしまう。あおむけで片腕を車体の内部に突っ込んだ姿勢で作業を続けるのは予想以上につらい。次第に腕がしびれ、額から汗が噴き出した。ボルトを締めたり緩めたり。三十分たって、ようやく山岸さんから“合格点”がもらえた。
「自動車はミリ単位の調整が必要なデリケートな機械。同じ車種でも、持ち主の運転頻度や使用状況で、整備の仕方が変わる。毎日が勉強で、技術の上達に終わりはないよ」と山岸さん。元通りになったワゴン車をいとおしそうに見つめる目に職人の意気を感じた。(池内●)
【メモ】自動車整備士は国家資格。合格するには、高校や自動車専門学校などで必要な科目を学ぶケースが一般的。山岸さんの会社では、自動車整備士が就く整備職の初任給は月17万円。
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