2010/03/05
少子化やテレビゲーム台頭の影響で沈滞が続くプラモデル業界で、ニッチな分野を開拓し、国内外から高い評価を受けているメーカーがある。従業員6人のファインモールド(愛知県豊橋市)。精巧なモノづくり技術で「オンリーワンの商品」を目指し、製品のジャンルも着実に広げつつある。
「九五式戦闘機二型」「三式中戦車『チヌ』」。旧日本軍の兵器を再現したファインモールドのプラモデル。全長10数センチという大きさだが、重厚感さえ漂う。
軍事関連のプラモデルは、ドイツ軍などの欧米ものが定番。しかし、社長の鈴木邦宏さん(51)は「これらは立派な日本の“産業遺産”。形に残しておくべきだ」。防衛省などに足しげく通って資料を集め、丹念に「小さな実物」を作り上げてきた。価格は2000~3000円台が中心だ。
子供のころからプラモデル作りが趣味だった鈴木さんは、岐阜県内の高校を卒業後、プラモデルの金型メーカーに勤務。その後、1987年に独立して創業する。自宅のこたつが仕事場だった。
第1弾の商品は知り合いの人気漫画家、鳥山明さんがデザインしてくれた架空の乗り物だった。これが完売。続いて、得意とするミリタリーものでヒットを飛ばした。「自分がほしいと思う商品なら絶対に売れる、という自信があった」
2000年にはSF映画「スターウォーズ」の商品化権の管理会社との間で、プラモデル製造のライセンス契約を締結した。業界ではドイツのメーカーと2社だけ。ミリタリー専門メーカーのイメージが定着しつつあり、「殻を破らないと次の成長はない」(鈴木さん)と意外性を狙ったという。
さらに昨年6月。工作機械大手、牧野フライス製作所の「立形マシニングセンタV33i」のプラモデルを発売した。モノづくり文化を支える1企業として、その土台となる“マザーマシン”にスポットを当てようという業界初の挑戦だった。周囲は反対したが、売れ行きは好調。今夏には経済産業省の支援で第2弾のフライス盤の発売も決まった。
逆風の続く業界を、アイデアと情熱で生き抜いてきた鈴木さんは語る。「市場が縮んだと嘆いても仕方がない。需要は自らがつくり出していくものだ」
(瀬戸勝之)
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