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【暮らし】就活中の『ゆとり世代』 “対人”苦手面接がカギ

2010/03/18

企業は育てる意識を

 就職氷河期再来といわれる中、二〇一一年卒の就職活動が本格化している。就活中の大学三年生は、今春、第一期生が四年制大学卒業を迎えた「ゆとり世代」と呼ばれる若者たち。のんびりして、競争が苦手とされる世代への対応に苦慮する就活の現場をのぞいてみた。 (服部利崇)

 「よろしくお願いします!」。元気なあいさつから自己PRを始めるリクルートスーツの大学三年の男女約三十人が、東京・渋谷の会場で模擬面接イベントに挑戦。面接官役の若手社員から「結論を最初に。エピソードは具体的に」などとアドバイスを受けた。

 「ゆとり世代」とは一般的に、中学三年時に導入された総合学習などの現学習指導要領で学んだ一九八七年四月以降の生まれを指す。

 模擬面接を企画した就職コンサルタントの唐沢明さん(41)は、首都圏など十五大学で大学生の就活にかかわっている。十年以上の指導経験から、「インターネットや携帯電話を使いこなすデジタル力はあるが、面と向かって話すアナログ力が落ちている。最近の学生は“対人”が弱い」と指摘。模擬面接でも学生に配慮し、面接官役の社員に「学生がやる気をなくさないよう、安直なダメ出しをせず、かつ厳しい一言を盛り込む」といったアドバイス方法の徹底を求めた。

 唐沢さんは「即戦力で、会社を辞めない社員を求める企業は、ストレス耐性を見極めようと、あえて意地悪な質問をする圧迫面接を行う傾向がある。だが、今の若者はしかられ慣れていない。打たれ弱く、本番が心配」と懸念する。実際、神奈川大人間科学部の三浦隆聖さん(21)は「勝負事や競争に弱い世代といわれるが、自分もそう。集団面接も苦手。はっきりしゃべれるようにしたい」と、メンタル面に不安を抱える。

 企業の採用計画は、昨年からさらに縮小傾向。楽天リサーチなどが二月に行った企業の人事担当者への十一年度採用調査で、一〇年度から採用数を減らすと答えた企業が31%に上る一方、「増やす」は11%にとどまる。氷河期とぶつかったゆとり世代の学生も不安を隠せない。神奈川大法学部の女子学生(21)は「会社説明会の予約さえ取れない。内定が取れるか不安」。

      ◇

 大学側もゆとり世代の就職支援に苦慮している。駒沢大キャリアセンター就職課の橋本長亮課長は「周囲のおぜん立てに慣れ、企業の求める人材になるための自分磨きに取り組まない傾向がある」と指摘。日本女子体育大キャリアセンターの安田伊佐男事務長も「今の学生はオンリーワン志向。一人一人にきめ細かい対応が必要で、手間がかかる」と話す。

 「若い社員の扱い方が分からない」。企業側から相談が多数寄せられる人材教育コンサルタント会社レジェンダ・コーポレーションでは、新人教育の担当者向けプログラムの注文が増えている。

 「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)がない」といらつく上司に対し、「上司が忙しすぎて、いつ声かけていいか分からない」と悩む若手という、ちぐはぐな構図が目立つという。

 「今でも若手社員に困惑しているのに、ゆとり世代が本格的に入ってきたら、どうなるのか」。そんな企業側の不安に、同社事業開発部の丹羽律(にわりつ)マネジャーは「ゆとり世代も戦力化しなければ、企業に将来はない。自分たちと違うと突き放すのではなく、育てていく意識が必要」と強調する。

 「ゆとり世代は教育制度の被害者」と強調する日本女子体育大の安田事務長は、企業側にこう求める。「異質な他者との付き合いが苦手な世代だが、就活で失敗と経験を積むうちに、きっと成長するはず。長い目で見守ってやって」