2010/03/15
ブラジル人を中心に約1万7000人の外国人が住む豊橋市で、学齢期にありながら学校に行っていない「不就学」の外国人児童・生徒が12人に上ることが市の調査で分かった。背景には、経済的な事情だけでなく、いじめに遭ったり、日本語ができず学校生活になじめなかったりすることもあるという。市は、日本語などを学び、公立小中学校への就学に備える無料教室への参加を勧めるなど、子どもたちが学ぶ場へと戻る支援をしている。
調査は、市が昨年6月以降、初めて行った。不就学が疑われる外国人児童・生徒671人を対象に郵送と戸別訪問を実施。不就学だった12人の内訳は小学生7人、中学生5人で、ブラジル人が最も多かった。理由は「経済的要因」と「いじめ」が各5人で、「日本語が不自由」が続いた。
市は結果を受け、不就学児童・生徒に、いずれも市内にあるNPO法人「豊橋ブラジル協会」とブラジル人学校が今年1月にそれぞれ開校した「虹の架け橋教室」への参加を呼び掛けている。
教室は文部科学省の事業の一環で、不就学だったり、経済的な理由などでブラジル人学校を辞める可能性がある児童・生徒を対象に、日本語指導やあいさつなどの生活適応指導、近くの公立学校との交流会などを無料で実施している。
子どもたちが期限の半年間を教室で過ごすことで、公立小中学校へとスムーズに入っていけるようにすることを目指している。
「これは何ですか?」「…トケイ(時計)」。豊橋ブラジル協会の教室には12人のうち3人が1月から通い始めた。午後1時から5時までに学ぶのは、日本語の文法や漢字、算数、理科、社会など。日本語の授業では、日本人教師の前で絵本を音読し、教師が指さして尋ねる物の名前を答えるなどして、語彙(ごい)を増やす日々だ。
教室に通い始めて2カ月ほどだが、3人は就学に向けた歩を少しずつ進めている。教室に来る前は自宅でテレビを見たり、ゲームをしたりしていたという男児(8つ)は「友達もできたし、授業が受けられて楽しい」。女児(12)も「夢はトリマー(ペットの美容師)。必要だから、もっと日本語を学びたい」と、最近は笑顔も見せるようになったという。
市は今後、同様の調査を実施する予定はなく、市教育委員会や外国人の集住団地の自治会と連携を取り、新たに不就学の児童・生徒が判明した場合は教室への参加を引き続き勧める予定。市の担当者は「外国人は義務教育の対象外。ただ、子どもたちには国籍に関係なく教育を受けてほしい。今後も子どもがどこかで学べるよう、支援していきたい」と話している。
(世古紘子)
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