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やってみました 記者たちの職業体験ルポ プロレスラー

2010/03/10

仕事後、深夜まで鍛錬

 刈谷市小垣江町の倉庫に午後八時すぎ、いかつい体格をした男たちが集まってきた。ここはプロレス団体「DEP」の練習場。所属十二選手のうち、一人を除きレスラー以外の仕事を持っている。だから練習開始はこの時間になってしまう。早春の夜、プロレス道場に一日体験入門した。
 「よろしくお願いします!」と選手会長の豊臣太郎選手(29)の声が響く。マット上で正座するのが練習開始の礼儀だ。「礼に始まり礼に終わる」はプロレスにも当てはまる。

 ストレッチをひと通り終えると次は首の強化。脚を広げ、前屈して首をマットにつけ、前後左右に何度もねじる。「痛い」という言葉をのみ込んだ。

 腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワット…。気が遠くなるほどの回数をこなした。準備運動に実に二時間を費やす。既にヘロヘロだが、筋肉と首を十分鍛えてから、ようやく受け身の練習が始まった。

 基本は柔道の受け身と同じだ。「あごを引いて、へそを見るように」と小杉研太選手(25)。

 鍛え上げられた選手たちは前方宙返りをして受け身をとるなど、次々に難しい練習に取り組んでいた。

 プロレスの試合ではバックドロップを食って激しくマットに打ち付けられるシーンを見るが、「頭は肩と腕で守っている。受け身ができない選手はデビューさせられない」とDEPの古沢弘樹代表(39)。ちなみにプロレスラーは一般的な生命保険に入れない。保険会社にとってはリスクが高いのだ。それだけにけがを防ぐ練習は大切だ。

 合同練習が終わったのは午前零時。一体、プロレス技はいつ練習するのか? 実は技の練習はさらにこの後。選手ごとに持ち技が違うため、合同練習になじまないからだ。個人練習は深更に及んだ。

 四十六歳の記者は翌朝、布団から起き上がれないほどの筋肉痛を味わうことになるが、レスラーが並外れた身体能力を持っているだけでなく、日ごろからいかに努力しているかを知り、プロレスを見る目が少し変わった。

 ところで記者の練習ぶりについて豊臣選手は「最近の若者にはないハングリーさを感じた。練習を積めば来年はリングに立てますよ」。本邦初、新聞記者とプロレスラーの二足のわらじも悪くはないか-。(浅井正智)

 【メモ】DEP主催の興行は練習場で行う月1回のミニ興行と、ホールを借りて行う2カ月に1回の本興行。選手は他団体の試合にも出掛ける。1試合のファイトマネーは規模に応じて5000~3万円とまちまち。これが全国的な有名選手になると、数十万円に跳ね上がる。

深夜の練習場でスパーリングを行う杉浦透選手(左)と正岡大介選手=刈谷市小垣江町で
深夜の練習場でスパーリングを行う杉浦透選手(左)と正岡大介選手=刈谷市小垣江町で