2010/02/25
育児休業を取得した人がスムーズに職場復帰できるよう、支援に取り組む企業が増えている。仕事についていけるか、子育てと両立できるか-など育休者が抱える不安は大きい。育休中の支援が優秀な人材確保にもつながる。 (境田未緒)
「なぜ働き続けるのか考えてみてください」。三菱東京UFJ銀行が名古屋市で開いた「かがやき育休者セミナー」。講師の言葉に、育休中の女性行員四十一人が頭をひねった。
従業員の六割が女性という同行は、「生き生きと女性が働けば、顧客満足の向上につながる」と、二〇〇六年四月、女性活躍推進室を設置した。
転居を伴う異動のない職制の人も、配偶者の転勤などで遠隔地への転勤を希望できる制度、短時間勤務などを次々と導入。〇七年からは、復職間近な人が先輩ママ行員の経験談を聞き、同じころに職場復帰する仲間と交流する「復職支援セミナー」を開いている。その結果、〇六年三月末時点で百六十人だった育休者が、〇九年九月末時点では六百二十人に増えた。
新たに始めた育休者セミナーでは、復職支援セミナーからさらに踏み込み、自身の働き方や人生設計を考えてもらう。推進室の鈴木初枝室長は「育休は、会社から離れ、自分の働き方を考えるいい機会。その材料にしてほしい」と語る。
セミナーでは、復職までの心構えや、求められる人材であり続けるために必要なことなどを講師が解説。実際に人生設計を記入してみる時間もあった。
四カ月の子を持つ窪田純子さん(34)は「会社から離れ不安だったが、復帰したら頑張ろうと思えた。育児にも張りが出る」と満足した様子。二年間の育休から四月に職場復帰する大島由貴子さん(32)は「背中を押された気がする。もっと早く話を聞けていたら、育休をもう少し有意義に過ごせたかな」と振り返った。
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厚生労働省の調査では、育休者に対し、職業能力の維持、向上のための措置を講じている事業者の割合は〇八年度39・7%と、〇五年度に比べて15ポイント近く上昇。内容は、社内報などによる情報提供、職場復帰のための講習などが多い。
三菱東京UFJ銀行の育休者セミナーでも講師を務めたキャリアネットワーク(東京)の安藤博子常務は「国は育休の制度だけ用意したが、仕事はただ続ければいいわけではない。中途半端な気持ちで復帰したら本人も周囲も困る」と語る。企業からの同様のセミナー依頼は、昨年から急激に増えたという。
「育休支援は、退職せず復帰してほしいという会社からのメッセージ」と語るのは、育休者の職場復帰支援サービスを運営するwiwiw(ウィウィ、東京)の岸田徹社長。インターネットを使った育児情報の提供や会社との情報交換、オンライン講座などを組み合わせたプログラムは〇一年、資生堂が社内向けに開発。他社からも利用申し入れが相次ぎ、〇七年に資生堂と、ネット教育を手がけるネットラーニングの共同出資で独立した。
現在、三百五十六社がプログラムを導入。語学や職場復帰のノウハウなどを学べるオンライン講座、上司との情報交換メールが人気だ。管理職で育休を取る女性も増え、マネジメントスキルなど、中身の濃い講座も増やしている。
育休支援が充実する一方、長引く不況で、育休を申し出た途端に解雇するなどの「育休切り」が問題化している。岸田社長は「不景気でも将来的に人材は大切で、優秀な中堅を失う方が損失。育休支援のメリットにまだ気付かない会社がある」と指摘する。
<復職支援への助成> 育児・介護休業者の円滑な職場復帰を支援する事業主には、21世紀職業財団を通じて助成金が支給されている。助成金の対象となる職場復帰プログラムは在宅講習や職場環境適応講習など。条件を満たせば、プログラムの期間と内容に応じて、1人当たり中小企業で21万円、大企業で16万円を限度に支給される。
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