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やってみました 記者たちの職業体験ルポ 観光協会職員

2010/02/24

催しの裏で大忙し

 豊田市と言えば自動車の街というイメージだが、五年前の大合併で多くの観光資源を抱え込み、今やすっかり観光地。紅葉や四季桜、冬のぼたん鍋などが、訪れた人たちを引きつける。そんな来訪者に見どころなどを案内し、地区の魅力を伝えるのが観光協会の役目。二月の週末、「中馬のおひなさん」が催され、そぞろ歩きが楽しめる足助地区で、足助観光協会事務局長の鱸(すずき)雅守さん(59)に同行してみた。
 名古屋市のNPOのメンバー八人が、民家や商店の軒先などに人形が飾られた旧街道沿いの町並みを視察していた。鱸さんが案内役だ。

 会場には、明治-昭和時代の土びな約百体がずらり。「土びなは三河地方で、子どもが生まれたときに贈られました」。記者は取材で仕入れた知識を披露してみた。黄色の法被を身にまとい、すっかりガイド気分だったが、「なぜ武将のひな人形があるの」と鋭い質問に思わずヒヤリ。すかさず鱸さんが「おひなさんは女の子だけでなく、子どもみんなのもの。だから男の子向けがある」と、こっそり耳打ちしてくれた。

 「僕も最初は知らないことばかり。積み重ねだよ」となぐさめてくれた鱸さんは、福岡県出身。全国的に有名な香嵐渓にひかれ、東京の観光団体から転職して二十五年になるという。

 年間、人口の三倍以上の百五十万人が観光に訪れる豊田市。観光協会は一見、華やかなイメージだがその仕事は極めて地味だ。秋の紅葉シーズンには、事務所は問い合わせの電話が鳴りっぱなし。職員らはその対応でぐったりする。

 イベントの主役は、地区の商店街や有志の面々だが、手が足りなければ出店でソーセージを焼いたり、揚げ菓子を作る手伝いも。大工仕事や駐車場の整理もこなす。

 中馬のおひなさんでは、ひな人形を運んだり、案内ボランティアの代役などで大忙し。「お客さんの笑顔が最大のねぎらい」という。

 気がかりは「お客さんが減っていること」。各地で似たイベントが増えたためだが、「もう新しいイベントを企画する時代ではない」と鱸さん。「足助には地元住民も知らない魅力があるかもしれない。その魅力を発見したい」。華やかな観光地を支える裏方としての誇りが垣間見えた。(渡辺陽太郎)

 【メモ】足助観光協会の事務局員や技術系職員は、豊田市などが株主の三州足助公社の職員。公社が運営する飲食店のみ調理師の資格が必要。学歴などは問わない。採用は不定期で、ほとんどが中途採用。初任給は公務員の給与に準じ、大卒で20万円ほど。

ひな人形の展示会場を案内する鱸さん(中)=豊田市足助町で
ひな人形の展示会場を案内する鱸さん(中)=豊田市足助町で