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【流儀あり】しんどい時間こそ共有 桂新堂・光田敏夫社長

2010/01/30

 7代目です。家業を引き継いで24年目になりますが、次の代にちゃんとバトンタッチするのが使命だと思っています。いわば「7区のえびせんランナー」ですね。

 縁あってうちの会社で働くことになった人たちに幸せになってもらいたい。会社はそのためにあるし、共に苦労して難局を乗り切ることで幸せになれると思っています。

 入社1年目の時です。ある百貨店の担当部長から言われた。「改装するから君のところの売り場はなくなるよ」とね。ガーン、ですよ。つてを頼って「もう一度チャンスをください」と懇願したら「3カ月だけ延長してやる。それで駄目ならあきらめろ」。

 そこから作戦会議ですよ。当時は正社員が15人ほどで、6、7人が連日会社に泊まり込んだ。どんな商品がお客さんに喜ばれるか、売り場をどうしようか。あれこれ議論して、デザイン学校出身者が提案したエビの絵のパッケージを商品化しました。

 そうしたら予想以上に売れて、部長が「この業績なら延長したる」と。仲間と交わした酒のうまさは今でも忘れられませんね。

 社長になって新鮮な素材を使った高級品に力を入れました。こんなえびせんべいがあるのか、といわれるような商品です。クルマエビの姿焼きを作ったし和菓子に学んだ四季折々のせんべいも提案したし、甘エビが水揚げされる北海道の余市に加工工場も建てた。

 甘エビは北海道から生で空輸してましたが、夏場は色が悪くなってしまうんです。運送管理などいろいろ工夫したけど駄目。そんな時、工場担当者が「漁場のそばに工場を持っていけばいいじゃないですか」とさらっと言った。まさに“目からうろこ”でしたね。

 今、従業員に勧めているのがマラソンです。私は4年前に始めましたが、健康にいいし、達成感もあるじゃないですか。まずはハーフマラソンの大会に参加してもらう。最初は嫌々ですが、ゴールを切った瞬間、感激する人が多いんです。

 でもそれだけじゃない。社内の風通しが良くなるんです。

 会社が大きくなると、どうしても「おれがこんなに苦労しているのにあいつらは」という気持ちが出てくる。それが、しんどい時間を共有することで仲良くなるんです。「よくやったなあ」「おれはこうだった」とそれぞれの物語もあって。相当雰囲気が変わりましたよ。

 みつだ・としお 名古屋商科大卒。80年、えび菓子製造販売の桂新堂に入社。86年に30歳で社長に就任し、新商品を次々と売り出す。53歳。名古屋市出身。桂新堂は1866(慶応2)年に創業し、年商は44億円。従業員は約500人(パート社員を含む)。