彦根市高宮町の元派遣社員・田中良則さん(41)が、一念発起して塗装会社に就職した。「きつくてもこらえる。これ以上、嫁さんに苦労させたくない」。四十路(よそじ)で初めて挑む職人の世界で最初の一歩を踏み出した。
田中さんは岐阜県垂井町出身。中学のころ父を亡くし、母も後を追うように倒れ、長男として家計を支えるため進学をあきらめて就職した。妻と彦根に移ったのは3年前。派遣会社に登録して短期の仕事をしてきた。
だが、昨秋からパタリと仕事がやんだ。派遣先との面接で好感触を得た数日後、「減産が決まったので雇えない」と断られ、さらに6社と面接し、建設会社に体験入社もしたが駄目だった。月20万円はあった収入はほぼゼロに。パートの妻も仕事が減り、貯金を切り崩してしのいだ。
1月末、新聞記事で地元の塗装業者・おかけんリフォームに40代で入社した森幸男さん(45)がいることを知った。「自分もやらなあかん」
同社で見習いとして仕事を始めて3日。基本作業を学ぶ日々だ。「早く一人前になりたい。将来は独立できれば」。新たな夢を生き生きと語った。
職人志願者の中途採用は「日本建築塗装職人の会」(埼玉県草加市)が全国の業者に呼び掛けており、約30人の採用が決まっている。
(伊藤弘喜)