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【医療】中部の最前線/粒子線治療 前立腺がん保険適用に

2018/04/10

「利用拡大に弾み」期待

 がん細胞の攻撃に適した粒子線(陽子線・重粒子線)の治療施設が全国で次々に生まれる中、患者数の多い前立腺がんの治療が4月から保険適用されることになった。これまでは、有効な治療法の乏しい一部のがんで保険が適用されていただけで、多くのがんについては、保険医療の候補にあたる「先進医療」にとどまったまま、患者は約300万円を自己負担していた。費用のハードルが下がり、関係者は「利用拡大に弾みがつく」と期待している。(編集委員・安藤明夫)

 名古屋市北区の名古屋陽子線治療センターは、2013年2月に治療が始まった当初は順調に利用者を伸ばしてきたが、昨年、一昨年は患者数が430人前後と停滞している=グラフ。

 海外で数年前、陽子線治療の科学的根拠を疑問視する論文が出たことで、他病院からの患者紹介のペースが落ちたことや、他の治療法との競合が、利用者が伸びない主な原因と同センターはみている。

 特に、同センターの患者数の40%強を占める前立腺がんの分野では、がんの形状に合わせてエックス線の照射量に強弱を付ける「強度変調放射線治療」や、手術支援ロボット「ダビンチ」を使った手術が注目されている。これらがともに保険適用されたため、“陽子線離れ”につながっていた。

 このため、同センターでは、前立腺がんの治療に、1回当たりの陽子線照射量を増やすことで照射回数を減らし、治療期間を2カ月から1カ月に短縮する「少分割照射」を14年10月に導入。名古屋市民を対象に治療費20万円の減免制度を設けるなど、患者が利用しやすい環境を整えてきた。全国の陽子線・重粒子線施設と協力し、治療成績などのデータをまとめる作業にも取り組み、今年1月の厚生労働省先進医療会議でようやく「十分な科学的根拠を有する」と認められ、保険適用につながった。

 少分割照射での治療は1回、20~30分ほど。副作用も少なく、1カ月に20回か21回の通院で治療が可能だ。荻野浩幸センター長は「仕事や介護を抱えながら治療する患者さんに適した治療法。保険が適用され、多くの患者さんに現実的な選択肢になったのでは。患者さんの生活スタイルに合わせて、選んでいただければと思う」と話す。

 同センターではこれから、5年生存率などのデータがそろい始める。前立腺がんだけでなく、肝臓がんや肺がんでも、高い治療成績が見込まれており、保険適用を目指している。

    ◇

組織の損傷少なく深部到達

 陽子線治療(全国で16施設)は、水素から取り出した陽子を加速器内で毎秒20万キロまで加速させ、がん細胞に繰り返し照射して破壊する。重粒子線治療(同六施設)の場合は、炭素イオンを用い、速度は光速の80%まで達する。

 いずれも体内の深部に到達し、止まる直前でエネルギーを放出するため、エックス線など従来の放射線治療に比べ、がん細胞の後ろ側にある正常組織の損傷が少ない。対象となるのは、前立腺、肝臓、肺、骨軟部(骨や筋肉など)、頭頸(とうけい)部(鼻や口、のど)などの固形がんだ。

 先進医療として、指定施設で保険外診療が行われてきたが、2016年の先進医療会議で、小児の固形がん(陽子線)、切除できない骨軟部がん(重粒子線)に限って保険が適用された。今年の同会議では、前立腺がんのほか、骨軟部がん、頭頸部がんの一部についても適用が広がった。

がん細胞にピンポイントで陽子線を照射する治療装置=名古屋市北区の名古屋陽子線治療センターで
がん細胞にピンポイントで陽子線を照射する治療装置=名古屋市北区の名古屋陽子線治療センターで

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