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【暮らし】施設に預け「一息」「後ろめたさ」 家族介護者、揺れる思い

2018/04/11

 介護が必要な家族をデイサービスなどの施設に預けると、ケアする側も一息つける。しかし、「動けない家族を置いて、自分だけ楽しんでいいのか」などと、葛藤を抱える人が少なくない。そんな悩みを抱えた人は、どう気持ちの折り合いをつけたらよいだろうか。愛知県春日井市で月に一度開かれている「家族介護者のつどい」に参加し、参加者たちの考えや思いを聴いた。

 愛知県内の女性(61)は1月中旬、旅先の仙台市内で迷った。自宅近くのショートステイ施設に預けた夫(66)を、予定より早く迎えにいくかどうか。夫は五年ほど前に脳出血で倒れて以来、高次脳機能障害があり要介護5。失語症があり、思うように体を動かせない。

 仙台に来たのは、東北地方で暮らす息子が急病になったから。4日間、夫を施設に預けて駆けつけたが、幸い息子はほどなく回復。1日早く帰宅できることになった。

 しかし、ここで立ち止まった。「空いた1日を、自分自身のために使ってもいいのでは」。悩んだ末、女性は仙台にとどまった。近郊の神社に初詣に行き、名物の牛タンを食べた。

 以前は夫の介護で疲れ、休みたくなると「自分は欲深い」と思ってしまった。それが変わり始めたのは昨秋のこと。人間ドックでがんの疑いを指摘された。その後の精密検査で異常はなかったが、初めて自分の死を意識した。「自分の人生が介護だけで終わるのは悲しい。楽しみたいと考えた。夫が亡くなった時を考え、一人だけで行動する練習もしておきたい」と思うようになった。予定を早めることなく帰宅したが、夫は怒ったりしなかった。

 つどいは、春日井市内で介護について相談できるカフェやデイサービス施設を運営するNPO法人「てとりん」が2010年から開いている。毎回、両親や配偶者を介護する十五人ほどが参加し、つらい気持ちを打ち明け合ったり、お互いの悩みにアドバイスを送り合ったりしている。

 認知症の妻が特別養護老人ホーム(特養)に入所している80代男性は「施設に入れてしまい、妻がかわいそう」と涙ぐんだ。しかし、入所させたことを悔やむばかりではない。毎週面会に行くと妻の横に座って話を聞く。自然と手を握ることもある。「家にいたら介護が大変で、手を握ることなどなかった。お互いの距離が縮まり、自分の気持ちが安らぐ」。自宅でみられないことに申し訳なさを感じる一方、「自分の体が悪くなる前に預けられてよかった」とも思っている。

 妻の介護をする70代男性は「妻がデイサービスに行き、離れている時の方が心配で落ち着かない」と言う。「男は妻がいないと何もできないから、倒れられると『自分が散々、苦労を掛けたから』と後ろめたさを感じ、必死で介護するのではないか」と話した。

 てとりんの代表理事で看護師の岩月万季代(まきよ)さん(50)も亡くなった母の介護中、夜間にスポーツジムに行くのを後ろめたく感じたという。「一生懸命に介護しても、『死にたい』と愚痴を言う母から逃げたいという思いもあったのかも。ごく普通のこととして介護し、普通に自分の時間を過ごせばよかった」と振り返る。さらに、施設を運営する立場から「施設が預かっている間は、家族には目いっぱい楽しみ、リラックスしてほしい」と呼び掛けた。

 (出口有紀)

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