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【くらし】「産後パパ育休」 創設1年 共に成長楽しむ機会

2023/10/11

東京の女子学生ら 当事者夫婦調査
上司の後押し望む

 「夫婦双方がキャリアを積むための『必要経費』」「育児の時間と楽しさを感じる時間は比例する」-。育休を取った男性のこんな思いが、実践女子大(東京都)の学生による当事者夫婦へのインタビューをまとめた報告書で浮き彫りになった。学生たちは「経験は男性の意識改革につながる。制度だけでなく上司の後押しがほしい」と指摘する。

 インタビューは、男性の育休が家庭内のジェンダー平等や女性のキャリアに与える影響を考えるため、人間社会学科の現4年生9人が、昨年11月~今年1月に実施。育休を取った男性とその妻計10人に、育休時の状況や取得前後で変わったこと、会社や社会への要望などを聞いた。

 3人目の出生時に初めて育休を取った男性。妻は「夫は長期間休むことに恐怖心があったと思う。1カ月の育休を通して、休んでも会社が回るという自信ができたのでは」と振り返る。すると、それまで一度も有休を取らなかった夫が、月に一度は取得するように。職場も必要に応じて休める環境に変化したという。

 2人の子の出生時にそれぞれ4カ月、5カ月の育休を取った男性は「妊娠何日目はどのような発達の状態かという本を妻と一緒に読んだ」と、知識を身に付けて臨んだ。「飲ませる時の哺乳瓶には適切な角度がある」と研究し、妻は「ミルクを飲ませるのは夫の方が上手」と安心して任せることができた。「取得前は友達に近い関係だったが、取得後は育児をする相棒」と妻は感じている。

 「家族あっての自分。親の責任として男性も育休を取得するべきだ」。第5子で初めて6カ月の育休を取った男性は「仕事をせず家族と向き合う時間をつくることは人生で絶対必要」と話す。男性は自動車販売の最前線で働く。4人目までは妻の両親が手助けし、「育児は100%妻」。夫の育休で、看護師の妻は「不公平感がなくなり、けんかが減った。昼間に大人の話し相手がいて、赤ちゃんの成長を一緒に喜べたのはよかった」と言う。

 夫婦それぞれが仕事を続け、昇進などを考えていくためには、取得は不可欠だとする声もあった。

 協力した夫婦が勧める育休期間は「最低でも産褥(さんじょく)期(出産後、母体が元の状態に戻るまでの期間)が終わる8週間。できれば保育園に入るまで」「2週間でも育児スキルは上がる」など。「人生を変える1カ月。1カ月取れれば対等の相談相手になる」と話す妻もいた。

 調査を担当した宮崎晴香さん(22)は「どれだけ取れるかで育児への向き合い方は変わる。会社は経験者に聞く会を開くなど支援して」と話している。(五十住和樹)

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男性の昨年度育休取得率17%
政府目標 ほど遠く
 厚生労働省によると、2022年度の男性の育休取得率は17・13%だった。年々上昇し過去最高となったが、「25年度までに50%」とする政府の目標にはほど遠い。特に小売業や宿泊業・サービス業で低かった。

 22年度の厚労省委託調査では、男性が育休を取らなかった理由(複数回答)は(1)収入を減らしたくない=39・9%(2)取りづらい職場の雰囲気・会社や上司の理解不足=22・5%(3)自分にしかできない仕事・担当する仕事がある=22・0%-などだった。

 今年4月から従業員千人超の大企業に公表が義務付けられた男性の育休取得率は46・2%で、平均取得日数は46・5日だった。中小企業の取得促進などが課題になっている。

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【産後パパ育休】 2022年10月に始まった。子の出生後8週間以内に計4週までを2回に分けて取得できる。また、子が1歳になるまで取得できる通常の育休も、分割して2回取ることが可能になり、柔軟に利用できるようになった。