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【暮らし】「オムツゼロ」介護広がる 介護施設

2018/10/31

 特別養護老人ホームなどの施設で、オムツを使わない「オムツゼロ」介護が広がっている。利用者の尊厳を保つとともに、車いすの人がトイレに行くのに「自力で立ったり歩いたりしたい」などの目標を持つことにつながっている。職員たちも、そうした利用者の変化が励みになっているという。

 「そりゃあトイレでする方が、オムツより気持ちいいよ」。愛知県高浜市の特別養護老人ホーム「高浜安立荘」に入所する女性(86)は笑う。女性は車椅子を利用していて要介護4。車椅子利用者の場合、施設ではオムツを使ってもらうのが普通だ。女性も前の施設ではオムツをしていたが、7月にこのホームに移ってきて以降は1日中、寝るときも含めてオムツはしない。

 以前の施設では、排便を促すために毎晩下剤を飲んだ。それもあって早朝に、トイレに行きたくて目を覚ますこともしばしばだったが、間に合わずオムツに漏らしてしまうことも。

 今は、お茶や野菜ジュースなど水分を多めに取り、下剤は使わない。夜間も、職員に手伝ってもらい、部屋にあるポータブルトイレで用を足す。

 女性は約40年前に事故に遭い、片足が義足。手すりにつかまって歩く訓練はつらく、これまではやりたくなかったというが、今月から積極的に取り組み始めた。「少しでも歩いて、トイレに行きやすくなるといいな」とほほ笑む。

 別の車椅子利用者で102歳の入所者女性も、オムツを使っていない。「トイレの手すりをギュッとつかんで、立ったり座ったりすると、気力が出る」と言う。

 ホームでは、2009年からトイレでの排便を目標にする「オムツゼロ」の取り組みを始めた。当時は約100人の入所者のうち約4割がオムツを利用していたが、今は約120人の入所者のうち、トイレでできないのは5人だけ。中にはパンツに尿漏れ防止のパッドを付けている人もいるが、認知症や寝たきりの人も、職員が定期的に声をかけてトイレに誘導する。正規とパートの介護士と看護師計53人が見守っている。

 職員の小西由香里さん(52)は「最初は大変だったが、成果が目に見えて出てくると本人だけでなく職員の喜びとなり、続けてくることができた。今は職員も慣れ、入所者の排せつのタイミングなどの情報を職員で共有している。オムツなしの介護は本人の尊厳を守るだけでなく、職員の励みにつながっている」と話す。

◆全国の施設で講習会

 「オムツゼロ」は、国際医療福祉大大学院の竹内孝仁教授(77)が提唱。竹内教授は高齢者のオムツかぶれや寝たきりなどを防ぐ目的で、04年度から全国の約2500施設で講習会を開いており、そのうちの約130施設がオムツゼロを達成した。

 竹内教授によると、成功のポイントは、1日1・5リットルの水分補給と歩行練習。便秘になりがちな高齢女性の腸が活発になり、便が出やすくなる。まずはトイレでの排便、次に尿と、目標を設定すると本人も施設も取り組みやすくなる。厚生労働省も4月の報酬改定で、排せつ支援を行う施設事業者に対して、介護報酬の加算を始めた。

 竹内教授は「介護保険制度では、本人の状態が改善するほど受けられるサービスも減り、事業者側の報酬が低くなってしまうという矛盾が生じる。今回の報酬改定で排せつ支援が評価されるようになったことは、事業者のモチベーションアップになるのではないか。本人や家族も『家に戻れるかもしれない』という希望を持てる」と話す。

 (細川暁子)

「オムツゼロ」の介護を目指すホーム。車いすを使う女性は、トイレに行きやすいようにと歩行練習に励む=愛知県高浜市で
「オムツゼロ」の介護を目指すホーム。車いすを使う女性は、トイレに行きやすいようにと歩行練習に励む=愛知県高浜市で