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【愛知県】「奨励金で障害者雇用を」中小企業向け 申請わずか、県PR

2018/10/23

 県が全国に先駆けて2017年度に始めた中小企業向けの障害者雇用奨励金の利用が進んでいない。年間50件ほどの申請を見込んで予算を確保してきたが、昨年度は五件だけで、18年度も18日時点で6件にとどまる。県は障害者の実雇用率が全国最低レベルで、県内に多い中小企業にどう雇用に踏み切ってもらうかが課題となっている。(中崎裕)

 県の障害者雇用率(昨年6月時点)は1・89%で、全国ワーストの東京都(1・88%)に次いで低い。雇用者数は毎年増加し17年に初めて3万人を超えたが、今年4月に2・0%から2・2%に引き上げられた民間企業の法定雇用率に満たない状況が続く。

 愛知労働局のまとめでは、県内で障害者雇用を義務付けられた5779社のうち、1人も障害者を雇っていない企業が1751社に上る。その99%以上が300人未満の中小企業だ。

 県の奨励金制度は、過去3年間に障害者を3人も雇用していないこうした中小企業が、新たに半年以上雇った場合に申請することができ、3社当たり60万円(短時間勤務は30万円)を補助する仕組み。同様の助成金制度は国にもあるが、雇って3カ月以内に法定雇用率を満たした企業しか対象にならず、その前段階の「まず一人」を後押しするのが狙いだ。

 県は初年度の17年度に55件分の予算約2200万円を確保。18年度も2850万円を当初予算に盛り込み、県就業促進課は対象となる企業を個別に訪問して制度をPRしている。

 申請に結び付いたケースはまだ少ないが、県は本年度、50件以上の利用を目指す。同課の担当者は「中小企業は障害者雇用のノウハウがなく、大きな負担と捉えている傾向が強い。奨励金をPRし、企業の背中を押したい」と話す。

    ◇

企業前向き、周知が課題

 障害者雇用率は年々上昇し、2017年の全国平均は1・97%となったが、中小企業の雇用率は全国的に低い状況が続いている。特に50~100人未満では全国でも平均1・60%で、製造業の中小企業が多い愛知では1・35%にとどまる。ただ、法定雇用率が今年4月に引き上げられたのに伴い、中小企業にも障害者雇用に前向きな姿勢が広がりつつある。

 「障害者を雇っている他社の話を聞き業務によってはうちでも活躍してもらえると考えている」。今月上旬、約170社が参加して名古屋市で開かれた障害者対象の合同就職面接会。初めて参加したソフトウエア開発会社の人事担当者はそう話した。

 80人ほどの社内に障害のある従業員はおらず、障害者向けの求人もしてこなかった。担当者は「以前は法定雇用率を満たさなくても仕方ないかなという捉え方だったが、一般の採用も困難な状況で、今はやらなきゃいけないという考え」と話す。

 会場では県就業促進課の担当者が個別に参加企業を回り、チラシを配るなどしてPR。企業側からは「県の助成があるのは知らなかった。ぜひ利用したい」との声も上がった。広く周知を図れるかが今後の課題だが、都道府県では例のない助成制度を始めた県には、他県からの問い合わせも寄せられているという。

 県とともに毎年4回、障害者向け就職面接会を主催する愛知労働局の担当者は「面接会への問い合わせは増えており、企業の意識は高まっている」と語る。

(メモ)

 法定雇用率 障害者雇用促進法に基づき、民間企業や国・地方公共団体、教育委員会に義務付けられている全従業員に占める障害者の雇用割合。今年4月の引き上げで、民間企業は従業員45・5人以上(短時間勤務者は0・5人)が対象。国・地方公共団体は2・5%、教育委員会は2・4%となったが、中央省庁などで障害者手帳を確認せずに算入するなど不適切な対応が発覚した。

障害者向けの合同面接会で面接に臨む参加者ら(手前)=名古屋市中区で
障害者向けの合同面接会で面接に臨む参加者ら(手前)=名古屋市中区で