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【暮らし】風疹が働き盛りの男性に流行 妊婦感染で胎児に影響も

2018/10/16

 首都圏を中心に風疹が流行している。患者の多くは30代後半から50代の働き盛りの男性で、症状はそれほど重くはならないケースが多い。ただ、妊婦が感染すると、子どもに重い病気や障害が出ることがあるため、国や医療機関などは、抗体検査やワクチン接種などで感染予防を呼び掛けている。

 5月中旬、40代男性が「熱っぽい」などと都内の病院を訪れた。腕にかゆみを感じていたが、この日発疹が全身に広がり、のどの痛みなど風邪の症状も出たことから受診した。風疹と診断され治療を受けた。

 国立感染症研究所によると、今年の全国の患者は3日現在、952人。昨年1年間の93人の10倍を超えている。男性は792人で、30代以降が84%を占める。首都圏以外では愛知県の患者数が目立ち、厚生労働省は首都圏の4都県と愛知県に対策を求める通知を出した。

 風疹は発疹や発熱などを伴う感染症。2~3週間の潜伏期間を経て発症する。唾液や咳(せき)など飛沫(ひまつ)で感染し、発症の前後各1週間に最も感染力が高まる。

 はしかや水ぼうそうほど感染力は強くなく、3日ほどで回復するが、妊婦が感染すると、子どもに心臓疾患、難聴、白内障などの重い病気や障害が起きる先天性風疹症候群(CRS)が出る可能性がある。

 CRS被害者らでつくる「風疹をなくそうの会『hand in hand』」共同代表の可児佳代さん=岐阜市=は「妊娠中の感染に気付かず、生まれた娘が先天性白内障と診断されて初めてCRSだとわかった母親もいる」と話す。厚労省によると、2012年10月からの2年間に報告のあったCRS計45例のうち11例が死亡している。

 女性の感染者は男性に比べて少ないが、妊娠するとワクチン接種はできないため、厚労省は妊娠を希望する人に抗体検査を勧め、抗体がない可能性が高いと分かった場合はワクチン接種をするよう促している。

 妊娠中の女性について、さいたま赤十字病院呼吸器内科副部長で医師の天野雅子さんは「なるべく人混みを避け、マスク、手洗い、うがいで自衛を。今季の流行が始まっているインフルエンザ対策にもなる」と呼び掛ける。厚労省は不要不急の外出をなるべく避け、風疹を疑う症状が出たら医師に相談するよう訴える。

◆ワクチン未接種は30代以上に多く

 今回の流行で、働き盛りの男性患者が多いのは、ワクチン接種の制度変更で、世代によってはワクチンを接種していない人が多いためだ。

 風疹の予防接種はかつて女子中学生のみを対象としていたが、未接種の男性から感染したとみられる妊婦のCRSの報告が相次いだため、1995年4月から生後12カ月から90カ月未満の男女児と男子中学生が加わった。

 このため、30代後半以上の男性は一度も予防接種を受けていない人が多く、今回、流行の中心の「谷間」の世代となっている=図。

 症状の出方に個人差があり、本人が感染に気付かず、知らないうちに感染源となっているケースがあるという。

 天野さんは「はしかなどとの混合を含めワクチンの接種記録や記憶がなく、風疹にかかったこともない30代以上の男性は、まず医療機関で抗体検査を受けてほしい。数値が低ければ、すぐにワクチン接種を」と話す。

 (北村麻紀)

さいたま赤十字病院・呼吸器内科副部長の天野雅子さん=さいたま市内で
さいたま赤十字病院・呼吸器内科副部長の天野雅子さん=さいたま市内で