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【暮らし】高まる“健康経営”への関心 職場でエクササイズ

2018/10/15

 職場で気軽に運動する機会をつくり、業務の効率アップや生活習慣の改善などにつなげる取り組みが広がっている。オフィスで体操やストレッチをしたり、ジムスペースを設けたり。働き方改革が進む中、社員の健康づくりで生産性の向上にも結びつけたいとして、企業の関心が高まりつつある。

 「ぐっと上に伸びましょう」

 三井物産グループのシステム会社「三井情報」(東京都港区)のオフィスに、女性トレーナーの声が響いた。社員が一斉にキーボードをたたく手を止め、体を伸ばす。肩や首など上半身を中心に8分ほど。人事総務部の中井伸洋さん(48)は「仕事中は座りっぱなし。(ストレッチで)血の巡りが良くなり、リフレッシュできる」と話した。

 体をほぐし、再び集中力を高めてもらおうと1月に開始。企業向けの運動プログラムを提供する「アスポ」(同)のトレーナーが毎週木曜、午後2時ごろに訪れ、ストレッチをベースに呼吸法やリズム運動を指導する。

 働き方改革推進室長の小松敦さん(47)によると、3カ月の試行で参加した約350人の8割が「集中力が上がった」と回答。社員のコミュニケーションのきっかけにもなっているという。

 アスポは都内を中心に大阪や名古屋などの約70事業所にプログラムを提供。前田直樹CEO(52)は「『健康経営』への関心が高まり、問い合わせが増えている」と言う。

 スポーツ庁によると、2017年度の調査で20~50代の「働き盛り世代」の男女で、週1回以上、運動するという人は4~5割。成人の平均より低く、中でも40代は一割近く下回った。理由は「仕事や家事が忙しい」が最多だった。昨年から、職場などでの運動に積極的な企業を「スポーツエールカンパニー」として認定し、紹介している。

 その一つ、特殊鋼商社の佐久間特殊鋼(名古屋市)は昨夏、本社1階の一角に社員用のランニングマシンや自転車型の器具などを設置。7月にはインストラクターを招いてのエクササイズも始めた。

 東京都は16年度に企業にインストラクターを派遣し、肩こり予防などに役立つプログラムを指導する事業を実施。今年、写真付きでやり方を紹介するガイドブックを作製し、都の「スポーツ情報ポータルサイト」からダウンロード(「オフィスdeエクササイズ」で検索)することもできる。担当課長の井内雅妃(みやび)さん(44)は「空いた時間に気軽に取り組み運動習慣をつけるきっかけにしてほしい」と話す。

◆40分目安に姿勢変える

 スポーツ科学が専門で、職場の健康管理に詳しい中京大名誉教授の湯浅景元さん(71)=写真=は職場でできる簡単な運動法として「40分を目安に、姿勢を変えることを心掛けて」と勧める。

 例えば、デスクワークが中心の人は立って電話応対したり、お茶を飲みながら立ち話をしたり。トイレに行きたくなくても、行ってみる。座ったまま、歩くように脚を動かす「その場でウオーキング」を3~5分ほど続けるのもいい。

 立ち仕事が多い人は、座って軽く打ち合わせをするのも手。スクワットのようにゆっくり膝の曲げ伸ばしを10回、休みを入れて2セット行うと、血流が良くなる。

 座ったまま、簡単な脚の筋トレもできる。椅子に座って両脚の足首を上下に重ねる。7秒ほどしっかり押し合い、足首を入れ替えて2セット行う。湯浅さんは「ちょっと姿勢や動きを変えるだけで、十分運動になる」と話す。

 (山本真嗣)

女性トレーナー(左)の声に合わせて、職場でストレッチをする三井情報の社員=東京都港区で
女性トレーナー(左)の声に合わせて、職場でストレッチをする三井情報の社員=東京都港区で
中京大名誉教授の湯浅景元さん
中京大名誉教授の湯浅景元さん