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【社会】「70歳雇用」官邸前のめり 未来投資会議で検討開始

2018/10/07

識者「働く人の視点がない」

 政府の未来投資会議で70歳までの雇用延長に向けた議論が始まった。元気な高齢者が長く働ける環境を整え、労働力不足を補うとともに、社会保障制度の安定を狙う。ただ、健康や働き方に対する考え方は人それぞれで、反発も予想される。痛みを伴う医療や介護の負担増などを巡る本格的な議論も来年の参院選後に先送りとなる見通しだ。

 ◇ ◇ ◇


 ▽何でもやります

 小学校教諭として長年働き、校長まで務めた元浜卿士さん(73)=東京都練馬区=は64歳だった2009年、高齢者専門の派遣会社「高齢社」(東京)に登録し、働き始めた。

 「何でもやります」。教育関係の仕事に対する執着はなく、むしろ未経験の世界で働きたいと考えていた元浜さんが紹介を受けたのは、家電メーカーの子会社。顧客宅に家電修理に赴く社員を補助する仕事で、作業の間、駐車違反にならないように車内での待機や車の移動を任されている。

 1日8時間、多い時期で月10働いて収入は8万円ほど。「働けるうちは働く。その方が元気でいられる。金額は関係ない」と元浜さん。高齢社の緒形憲社長(69)は「意欲と能力がある人が働き続けられるよう政府が環境整備することは評価したい」と話す。


 ▽ぬるいものから

 65歳以上の雇用促進はそもそも官邸のトップダウン。9月の自民党総裁選で安倍晋三首相が打ち出し、労働行政を所管する厚生労働省には寝耳に水だった。省幹部は「単純に70歳まで延長するのは難しい。まずは企業の努力目標とするしかないだろう」と打ち明ける。

 一方、経済産業省は官邸と歩調を合わせる。首相の三選が決まった翌日には、政策の方向性を決める会議を早速開催。説明資料には、元気な高齢者が増えていることや、就労意欲の高さを示すデータなどを盛り込み、雇用促進を後押しした。

 企業側には戸惑いも。定年延長が義務化されれば、人件費が増加することや健康管理面での一層の気配りが必要になるためだ。電機メーカーのある社員は「人工知能(AI)など急速な技術革新が進む中、高齢者が一線で働き続けるのは正直難しい」と指摘した。

 来年に統一地方選や参院選を控え、未来会議では医療や介護分野での負担と給付の見直しなど、痛みを伴う領域には踏み込まない方針だ。根本匠厚労相も就任直後の会見で、原則65歳の公的年金受給開始年齢を引き上げる必要はないとの認識を示し、予防線を張った。「健康寿命の延伸やAI活用など、まずはぬるいものから始める」(官邸筋)


 ▽国家総動員態勢

 老後の過ごし方への価値観も分かれる。高知県南国市の西野義輝さん(68)は50代前半で自営の精米所を閉じ、今では趣味のイノシシ猟が生きがいだ。自宅は持ち家で、畑を持つ知人から季節の食材の差し入れもある。西野さんは「もともと人を使うのも人に使われるのも苦手。ぜいたくをしたいとも思っていないので、今の暮らしで満足」と理由を語る。

 経済アナリストの森永卓郎氏は「年金の支給開始を70歳にすれば、現在の給付水準を維持できるので、政府は老後をなくして『みんな働け』と呼び掛けている。政権が掲げる一億総活躍社会は経済成長を続けるための国家総動員態勢で、働く人の視点が全くない」と警鐘を鳴らした。