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【地域経済】目指せ 社風世界一 春日井のイソワ、見学続々

2018/08/21

会社や仕事、目標…社員自ら語る

 「世界一、社風の良い会社」を目指す、創業九十八年、社員約三百人の段ボール機械製造のISOWA(イソワ、愛知県春日井市)に、国内外から視察が相次いでいる。訪問客の注目を集めるのが、各部署の社員が業務内容や会社への思いを語る「ディスカバリーツアー」。お盆前の平日、様子をのぞいてみた。(長田弘己)

 「今年四月から残業をしないように、ペアで働いて仕事を共有できるようにしています」-。調達グループで働く入社五年目の吉田陽祐さん(26)が、自分の職場で声を張り上げた。来客が動くと、また別の社員が話し始める。社員がこうやって話すことを同社では「自分語り」と呼ぶ。

 どの社員も自分の仕事の目標や会社の理念を自らの言葉で説明する。コミュニケーションの円滑化が望め、社内の風通しが良くなるだけでなく、自らの考えを整理する能力やプレゼンテーション能力が高まることにつながっているようだ。吉田さんは「今回で十回目ぐらい。毎回、来客に合わせて内容を変え、自分が思ったことを話す。会社から『これは駄目』とか言われたことはない」と明かした。

 「社風の良い会社」を掲げたのは五年前。二〇〇一年に社長に就いた磯輪英之社長(63)は、さまざまな研修やイベントを実施してきたが「社員のためにならなかった」とみて、社員との関係づくりを根本的に見直すことに。自ら夜勤の社員にねぎらいのメールを送るなど声かけをはじめとする努力を続けた。この結果、次第に自発的に動く社員が増え、自分語りの文化も自然になじんでいった。

 この日の訪問客は、人を大切にする経営学会(坂本光司会長=元法政大大学院教授)のメンバー約三十五人。中小企業の経営に詳しい坂本会長は「社員と家族の幸せを軸に経営し、無理な成長を追っていないことが一番」と評価する。同社は今年、同学会が社員を第一にした経営をする企業に贈る「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員会特別賞を受賞した。

 同社のユニークな企業文化は業績にもつながっている。二〇一八年三月期決算の売上高百十六億円は前期比増収で、ここ数年堅調に推移している。最近の離職者は五年間で三人にとどまる。

 磯輪社長は「社員が幸せに働ければ、社長もうれしくなり、それが社員にも伝わる。会社が一つのチームとして好循環している手応えを感じる」と、取り組み継続に意欲をにじませた。