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【特報】「コンビニ外国人」本音は 欠かせぬ労働力 共生いかに

2018/07/19

 コンビニで働く外国人はここ数年急増し、大手3社で4万人以上となった。既に身近な存在だが、本音はなかなか紹介されない。どんな生活をし、なぜこんなに多いのか。「コンビニ外国人」(新潮新書)を5月に出版したフリーライター芹澤健介さん(45)に最新事情を聴いた。 (橋本誠)

 ◇ ◇ ◇

 「以前は中国系が多かったが、東日本大震災後は日本語ブームのベトナムやネパールの出身者が増えている。最近はスリランカ、ウズベキスタン、ミャンマーの人も多い」。2012年以降、10数カ国から来た約100人のコンビニ従業員を取材した芹澤さんが話す。

 彼らの大半は留学生で、週28時間までアルバイトが認められている。待遇は基本的に日本人と同じ。時給の高い深夜に働いた後、午前中に日本語学校で学び、大学や専門学校を目指す。「まじめで、比較的日本語能力が高い。接客も従業員同士の会話も日本語。将来は日本で働きたいと話す人もいる」

 そんな彼らが日本に来る理由は、「勉強しながら働ける珍しい国」だから。「クールジャパンのような日本文化に魅力を感じているのかと思ったら、違った。家に仕送りできるかもしれないし、日本語を習得して帰国すればビジネスチャンスも広がる」

 そんな思惑と、人手不足のコンビニ業界のニーズが一致した。少子化に加え、日本の若者は家庭教師などをバイトに選びがち。とくに深夜のコンビニ勤務のバイトは集まらず、「僕がシフトに入らないと、店長も困る」(ウズベキスタン出身の男性)といった声も多い。このため、コンビニ側は近年、送り出し国での研修や多言語対応に力を入れているという。

 日本政府も「留学生30万人計画」を掲げ、受け入れに積極的だ。ファストフードや居酒屋も含む留学生バイトは昨年は約26万人となり、13年の2・5倍に増えた。日本語学校は過去5年で200校も増え、680校もある。

 では、彼らの生活実態はどうか。日本語学校の授業料や渡航費は現地の平均年収の数10倍になることもあり、多くの留学生が借金を背負っている。バイト代で進学費用をためるのは難しく、共同生活で家賃を浮かす人が多い。

 中には強制送還覚悟で週28時間を超えて働く人や、バイト先のあっせんで摘発される日本語学校もある。芹澤さんは「留学生ビジネスはもうかるのだろう。日本語学校は法務省が認可しているが、教育機関として文部科学省がチェックすべきだ」と求める。

 日本は「移民」を認めていないが、外国人労働者は5年連続で過去最多を更新し、昨年は約128万人になった。この数字は「外国人技能実習制度」による労働者を含むが、同制度を利用した悪質業者からの失踪者が相次ぎ、批判も強い。それにもかかわらず、最近は同制度の対象に「コンビニの運営業務」を加えようとする動きもある。半面、大学卒業後に就職を希望する留学生へのケアはほとんどない。

 東京大大学院のベトナム人留学生は「東京五輪が終わったら日本は不況になり、外国人は減る」と芹澤さんに話したという。開催後に経済成長が鈍る国が多いからだ。人口減少に転じる中国などと労働力の奪い合いも始まる中、引き続き、彼らが日本を選ぶとは限らない。

 芹澤さんは「移民に賛成か反対かという議論を超えて、もう私たちの生活は外国人の労働力に依存している。実際に隣で働き、生活している人たちと、いかに共生していくかを考えるステージに入っている」と話している。