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【働く】勤務間インターバル制度 「働かない時間」確保で過労防止

2018/07/02

労働者調査 13時間未満で睡眠の質悪化

 勤務を終えてから次の勤務まで一定の連続した休息時間を確保し、長時間労働を抑制する働き方「勤務間インターバル制度」。過労を防ぐ効果が期待され、政府も普及を進めるなど注目を集める。インターバルが長くなるほど睡眠の質が高まるという調査結果も。担当した研究者は「食事や入浴、家族との団らんなど休息する時間を確保するためにも有効な制度」と導入を推奨している。(寺本康弘)

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 働く人の健康のため、長時間労働の解消は喫緊の課題。これまでは労働環境の改善や業務量の削減などで過労抑止を図ってきたのが通例だった。これに対し、勤務間インターバル制度は働かない時間に注目する考え方。仕事と生活の調和を意味する「ワークライフバランス」が重視される中、必要性が議論され始めている。

 欧州連合(EU)が1993年、終業後に最低11時間の連続した休息を義務付ける国内法の整備を加盟国に求めた。これをきっかけに制度が注目された。

 EUの11時間を例に考えてみる。残業で午後11時に退社した場合、次の出社時間は翌日の午前10時以降としなければならない。就業規則などで同九時始業と決まっていても会社側は1時間遅らせて出社させなければならない。

 導入する場合、何時間インターバルをとればいいのか。労働安全衛生総合研究所産業疫学研究グループ(川崎市)は終業から始業までのインターバル時間と、睡眠の質との関連について労働者に質問用紙を配って調査した。

 調査では、過去一カ月の勤務を振り返りながら、寝付きと寝起きの状態や、睡眠中に目覚めたかなど回答してもらった。調査を行った同グループ部長の高橋正也さん(50)=写真=は「終業と始業の間を13時間以上空けないと、睡眠の質が悪い状態になる傾向が表れた」と話す。

 調査では、インターバルが13時間より短い場合、睡眠時間が六時間半を下回るようになった。高橋さんは「睡眠が短いと、睡眠中の疲労回復が不十分になり、睡眠の質の低下に関連すると考えられるため」と指摘する。

 インターバル時間での過ごし方を具体的に考えてみよう。EUの11時間を例にすると、通勤に片道一時間かかる人は、残りは九時間。この時間内に睡眠や食事、入浴などのほか、家族との団らんや趣味などリラックスする時間も確保しないといけない。さらに家事や介護・育児などが加われば、十分な睡眠が確保できなくなる恐れもある。

 そもそもインターバルが11時間とすると、休憩時間一時間を差し引いても、通常の八時間労働に加え4時間の残業が発生する計算になる。仮にこのまま1カ月に20日間続くと、1カ月で過労死ラインとされる時間外労働80時間に達してしまう。

 高橋さんは「勤務間インターバル時間さえ守れば、その前後はずっと働かせていいというものではない」とする。その上で「職場の繁閑や業務量をしっかり把握した上で、労働者の健康を守りながら、実行できる制度を導入してほしい」とアドバイスする。

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導入企業 わずか1.4%

 厚生労働省は2020年までに勤務間インターバル制度の導入企業の割合を10%にすることを目指す。

 同省は助成金を出すなど普及に努めるが、企業の動きはにぶい。実際に導入している企業はわずか1.4%。「導入の予定はなく、検討もしていない」と答えた企業の割合は92.9%(2017年就労条件総合調査)になる。

 理由は「制度を知らなかった」が40.2%、「超過勤務の機会が少なく、制度の必要性を感じない」が38%だった。