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【社会】長時間労働を強制終了 夜8時にPC電源オフ

2018/05/31

1時間半以内 プチ残業 中部の企業 知恵絞る

 働き方改革として、長時間労働の是正に中部地方の企業が知恵を絞っている。社内での単なる呼び掛けにとどまらず、決められた時間になると自動的にパソコンの電源が切れるなど、強制力のある試みも出ている。過労死が社会問題化する中、管理職を含めた意識改革につなげる考えだ。(石原猛)

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 ガス機器メーカーのリンナイ(名古屋市)は全国に約100カ所ある営業拠点で、繁忙期などの特例を除き、午後8時になるとパソコンの電源が自動的に切れるようにした。2012年に南関東の拠点で試験的に導入し、15年までに段階的に全国へ広めたという。

 人事担当者によると、取引先の都合に合わせて働く営業担当の場合、本社の目が届きにくい支店・支社などで労働時間が延びやすい傾向があった。強制シャットダウンの導入後、15年からの3年間で全国の営業担当者の残業時間が年3%ずつ短くなった。さらに、残業の事前申請や従業員組合による社内巡回なども進める。内藤弘康社長は、働き方改革について「基本的な取り組みを徹底させ、効果を上げたい」と話す。

 東海東京証券(名古屋市)を傘下に持つ東海東京フィナンシャル・ホールディングスも、14年から全国の全営業店で午後9時にはパソコン電源が切れるように。その後、電源オフを段階的に早め、今では午後8時で切れる。

 産業用ロボットなどを製造するFUJI(愛知県知立市)では、金曜日の「ノー残業デー」に加え16年度から水曜日を「プチ残業デー」と定めた。この日は残業を1時間半以内に抑えるルールで全社員が対象だ。「ルールが厳しすぎると、現場が急には対応できない」と広報担当者は説明しており、残業を奨励しているわけではない。「プチ」の達成率は80%に達しており、「意識を少しずつ変えることでメリハリのある業務につなげる」との狙いがある。

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◆短縮策実施86%

 安倍政権が今国会での成立を目指す働き方改革関連法案は31日、衆院本会議で採決される予定だ。法案の柱の1つが、残業時間の上限を年720時間、1カ月では休日出勤も含め100時間未満などとする罰則付き規制。大企業では2019年4月から、中小企業では20年4月から適用されるため、企業側は対応を急いでいる。

 中日新聞社が中部の主要企業143社を対象に実施した新卒採用アンケートでは、長時間労働の是正について尋ねたところ、「具体策を取っている」との回答は86・4%に上った。

 リクルートマネジメントソリューションズ(東京)の佐々木一寿シニアスタッフは「長時間労働は目に見えやすい問題であり、働き方改革の早い段階で取り組む企業が多い」と指摘。その上で「根本的な業務内容を見直さずに、時間だけを短縮するのは限界もある。取引先との商慣習の見直しなど、より踏み込んだ対策を進めることで、働く人たちの幸福度向上につながるのではないか」と話している。