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【愛知】障害ある子に就労学習支援 名古屋で県内初の特化デイサービス

2018/04/26

 知的障害や発達障害がある中高生向けの放課後等デイサービス「みらせんジュニア熱田教室」が今月、名古屋市熱田区でオープンした。企業から受注した内職の就労学習に特化したサービス内容は、県内初の試みという。運営にあたるNPO法人「障がい者みらい創造センター」の竹内亜沙美理事長(34)は「障害がある子どもたちが社会で活躍し、豊かな人生を送る手伝いをしたい」と語る。

 自然光が差し込む明るい教室で、15歳の利用者が道路標識部品の組み立て作業を終えた。「できました!」。作業の報告、連絡、相談は自発的に行うのがルール。教室のスタッフに検品を受ける表情は誇らしげだ。

 利用時間の大半を占める就労学習では、提携する企業から継続的に受注した部品の組み立てや梱包(こんぽう)、データ入力作業を行う。手順や完成度、納期は発注元の企業が設定し、リアルな労働環境を体感できる。

 現在は障害者雇用を考えている名古屋市内の4社と連携。工賃は受け取らないが、納品した部品は実際に工事現場などで使用される。「どこの道路で使われるかな」と仕事の先を想像し、人の役に立つ喜びを感じることも学習の一環だ。

 3月まで同市立南養護学校で教諭をしていた竹内さんは、以前から卒業生の就労を気に掛けていた。市教委によると市内の特別支援学校(知的障害)普通科の昨年度卒業生192人のうち、一般企業に就職したのは28人だけ。障害が軽度の場合、障害者年金は支給されない可能性があり、生計を立てられなければ生活保護を申請することになる。将来の不安について保護者から相談を受けることも多かった。

 「非常に高い作業能力がある。戦力として社会に送り出したい」と竹内さん。2015年から企業向けの講演活動を始め、障害者が活躍する職場づくりの提案や助言を行う中で、企業から「育成に時間がかかる」との声が上がった。

 学校と実社会では、周囲が支援に割ける人手も時間も差がある。変化に適応するには、中高生のうちから自立に向けて準備をして慣れていくことが重要だと感じ、NPOを設立し、「手助けなし」の本格的な作業を体験して学べるデイサービスを開校することにした。教室の備品の多くは竹内さんの考えに賛同する企業から寄贈された。

 現在の利用者は10人。今後は提携先を増やし、教室で力を付けた利用者の就職につなげていく。

 (中村玲菜)

 <放課後等デイサービス>  児童福祉法に基づき、小中高校に就学している障害者を対象に放課後や夏休みなど長期休暇中、生活能力向上のための訓練を継続的に提供する場。県障害福祉課によると、2017年4月時点で県内には769カ所あり、定員総数は7357人。市町村の「受給者証」の発行を受ければ、障害者手帳がなくても利用できる。料金はサービス費の1割負担だが、所得状況に応じた負担上限額が設定されている。

 <みらせんジュニア熱田教室> 知的障害・発達障害がある中高生が対象で、利用時間は平日午前11時半~午後5時半と、土曜・祝日の午前10時~午後4時。日曜定休。定員25人。送迎なし。(問)同教室=052(887)4993

福祉施設「みらせんジュニア熱田教室」で道路標識の部品の組み立て作業をする子どもたち=名古屋市熱田区で
福祉施設「みらせんジュニア熱田教室」で道路標識の部品の組み立て作業をする子どもたち=名古屋市熱田区で